子供の口呼吸を放置するとどうなる?歯並びへの影響と改善トレーニング
2026.03.25
ファミリー⻭科
子どもの顔を見ていると、「いつも口が開いている」「気づくと口で呼吸している」と感じることはありませんか。いわゆる「口ポカン」と呼ばれる状態です。風邪や鼻づまりのときに口呼吸になることは珍しくありませんが、普段から口が開いている状態が続く場合は注意が必要です。
子どもの口呼吸は、歯並びや顎の発育に影響することがあります。口が開いたままだと舌の位置が下がり、唇や頬の筋肉の働き方が変わるためです。
その結果、出っ歯や前歯が噛み合わない開咬などの歯並びの変化につながることがあります。
近年は、食べる・話す・呼吸するなどの口の機能の発達を総合的に評価する「口腔機能発達不全症」という考え方も広がっています。口呼吸は、その確認項目の一つとされています。口を開けた状態が続くと、舌の位置や唇の筋肉のバランスが変わり、歯並びや顎の発育に影響する可能性があると小児歯科では考えられています。
子どもの歯並びというと、遺伝や顎の大きさを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし実際には、舌の位置や唇の力、呼吸の習慣など、日常の口の使い方が関係することもあります。普段の生活の中で口が開いている時間が長い、寝ているときに口呼吸になっているなどの様子が見られる場合は、口の機能が十分に働いていない可能性もあります。
この記事では、子どもの口呼吸とはどのような状態なのか、歯並びにどのような影響があるのか、見分け方や原因、そして改善のために取り組めるトレーニングについて、分かりやすく解説します。口呼吸のセルフチェックや歯科に相談する目安も紹介しますので、気になる様子がある場合の参考にしてください。
目次
監修した先生
奈良 倫之 先生
医療法人社団 歯友会 理事長
ファミリー歯科 院長
第1章 子供の口呼吸とは?見分け方と原因
子どもの口呼吸は、普段の生活の中では意外と気づきにくいものです。口が少し開いている状態が続いていても、「癖なのかな」と見過ごしてしまうこともあります。しかし小児歯科では、口呼吸は歯並びや顎の発育、口の機能の発達と関係する可能性があると考えられています。
まずは、口呼吸とはどのような状態なのか、どのように見分ければよいのかを確認しておきましょう。
口呼吸とはどのような状態か
人は本来、鼻で呼吸する「鼻呼吸」が基本です。鼻には空気を温めたり、ほこりや細菌を取り除いたりする働きがあります。そのため、鼻呼吸は体にとって自然な呼吸方法とされています。
一方で、口を開けて呼吸する状態が習慣になっている場合は「口呼吸」と呼ばれます。口呼吸が続くと、口の周りの筋肉の使い方や舌の位置が変わることがあります。これが長く続くと、歯並びや噛み合わせに影響する可能性があります。
子どもの口呼吸セルフチェック
子どもに次のような様子が見られる場合、口呼吸の可能性があります。日常生活の中で確認しやすいポイントをまとめました。
| チェック項目 | 考えられる状態 |
|---|---|
| 普段から口が開いている | 口呼吸の可能性 |
| 寝ているときに口を開けている | 鼻呼吸ができていない可能性 |
| 唇が乾燥しやすい | 口呼吸のサイン |
| いびきをかくことがある | 鼻づまりの可能性 |
| 食事のときにクチャクチャ音がする | 口の機能が未熟な可能性 |
これらがいくつも当てはまる場合は、口呼吸の習慣がある可能性があります。
子どもに多い口呼吸の原因
子どもの口呼吸には、いくつかの原因があります。単一の理由ではなく、複数の要因が重なっていることもあります。
主な原因として次のようなものが考えられます。
- アレルギー性鼻炎などによる鼻づまり
- 唇を閉じる筋力が弱い
- 舌の位置が低い
- 口を閉じる習慣が少ない
- 指しゃぶりなどの癖
歯科では、口呼吸だけを単独で判断するのではなく、唇の閉じ方や舌の位置、食べ方などを含めて口の機能を総合的に確認します。こうした口の機能の発達状態は「口腔機能発達不全症」として評価されることもあります。
参照:日本小児歯科学会 口腔機能発達不全症の治療
https://www.jspd.or.jp/recommendation/article26/
第2章 子供の口呼吸が歯並びに与える影響
子どもの口呼吸は、見た目の問題だけではありません。口を開けた状態が続くと、舌や唇、頬の筋肉のバランスが変わり、歯並びや顎の発育に影響することがあります。歯は周囲の筋肉からの力によって位置が保たれているため、呼吸の習慣が変わると、歯の並び方にも変化が起こることがあります。
口呼吸が歯並びに影響する理由
通常、舌は上あごに軽く触れた位置にあります。この舌の位置が、上あごの形を内側から支える役割を果たしています。また、唇や頬の筋肉は歯を外側から支える働きをしています。
しかし口呼吸の状態では、口が開いている時間が長くなるため、舌が低い位置に下がりやすくなります。さらに、唇の筋肉も十分に働かなくなるため、歯を支える筋肉のバランスが変わってしまいます。その結果、歯が前方に動いたり、噛み合わせに変化が生じたりすることがあります。
口呼吸によって起こりやすい歯並び
口呼吸と歯並びの関係は、舌の位置や口周りの筋肉の働きと関係していると言われています。代表的な例をまとめました。
口呼吸と歯並びの関係
| 口呼吸による状態 | 起こりやすい歯並び |
|---|---|
| 舌が低い位置になる | 上の前歯が前に出る(出っ歯) |
| 唇の筋力が弱くなる | 前歯が外側に傾く |
| 舌を前に出す癖がつく | 前歯が噛み合わない(開咬) |
| 口が常に開いている | 顎の発育不足や歯列の乱れ |
こうした歯並びの変化は、すぐに目立つわけではありません。しかし、口呼吸の習慣が長く続くと、少しずつ歯並びに影響が現れることがあります。
顎の発育にも影響する可能性
子どもの成長期は、顎の骨が発達する重要な時期です。鼻呼吸ができている場合、舌は上あごを内側から支え、顎の幅の成長に関わると考えられています。
一方で口呼吸が続くと、舌が下がった位置にとどまりやすくなります。その結果、上あごの発育が十分に広がらず、歯が並ぶスペースが不足することがあります。これが歯並びの乱れにつながることもあります。
海外の研究でも、口呼吸は顎顔面の成長や噛み合わせと関連する可能性が指摘されています。
参照:The impact of mouth breathing on dentofacial development
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9498581/
また、日本小児歯科学会でも、呼吸や咀嚼、嚥下などの口の機能の発達を確認することが重要とされています。
参照:日本小児歯科学会 口腔機能発達不全の治療に関する重要なお知らせ
https://www.jspd.or.jp/recommendation/article26/
第3章 子供の口呼吸の実態と特徴
子どもの口呼吸は、特別なケースではなく、比較的多く見られる状態とされています。普段の生活の中では「癖かな」と見過ごされることもありますが、小児歯科の研究では一定の割合で確認されています。
小児歯科学会誌に掲載された調査では、保育園児の約2割に口呼吸の可能性があることが報告されています。口呼吸の子どもでは、口の機能の発達や生活習慣に関係する特徴がみられることもあります。
ここでは、研究や臨床の現場で指摘されている特徴を整理してみましょう。
参照:日本小児歯科学会誌 小児の口呼吸に関する実態調査
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspd1963/41/1/41_140/_article/-char/ja/
口呼吸の子どもによく見られる特徴
口呼吸の子どもでは、次のような特徴が確認されることがあります。
- 口が開いている時間が長い
- 唇を閉じる力が弱い
- 舌が低い位置にある
- 食事のときにクチャクチャ音がする
- 飲み込むときに舌が前に出る
- いびきをかくことがある
これらは単独で現れることもあれば、いくつかの特徴が重なっていることもあります。
口呼吸と生活習慣の関係
口呼吸は、日常生活の習慣とも関係することがあります。たとえば次のような要因が指摘されています。
- アレルギー性鼻炎などによる鼻づまり
- 長時間の口呼吸の習慣
- 柔らかい食事が多い生活
- 口周りの筋肉を使う機会が少ない
- 指しゃぶりなどの癖
こうした生活習慣が続くと、口の機能の発達に影響する可能性があります。
歯科で行われる口の機能の確認
近年は、子どもの口の機能を評価する取り組みが広がっています。食べる、話す、呼吸するなどの機能が十分に発達していない状態は「口腔機能発達不全症」として評価されることがあります。
歯科では、口呼吸だけを確認するのではなく、次のような点も含めて総合的に評価します。
- 唇を閉じる力
- 舌の位置
- 飲み込み方
- 食べ方
- 発音
- 呼吸の方法
こうした評価を通して、子どもの口の機能の発達状態を確認していきます。
早めに気づくことの大切さ
口呼吸は、長く続くほど習慣として定着しやすくなります。そのため、子どもの頃に気づいて口の使い方を見直すことが大切です。
普段の生活の中で、口が開いている状態が多い、食事のときの様子が気になるなど、気になるサインがある場合は、一度歯科で相談してみるのも一つの方法です。子どもの成長に合わせて、口の機能を少しずつ整えていくことができます。
第4章 子供の口呼吸を改善するトレーニング(MFT)
子どもの口呼吸は、生活習慣や口の筋肉の使い方と関係していることがあります。そのため、口の機能を整えるトレーニングを行うことで、改善につながることがあります。こうしたトレーニングはMFT(口腔筋機能療法)と呼ばれ、小児歯科や矯正歯科で取り入れられている方法です。
MFTは、舌や唇、頬などの筋肉の動きを整え、正しい口の使い方を身につけることを目的としています。歯並びを直接動かす治療ではありませんが、口の機能を整えることで、歯並びへの影響を減らすことが期待されています。
MFTとはどのようなトレーニングか
MFTでは、次のような口の機能を確認しながらトレーニングを行います。
- 唇を閉じる力
- 舌の正しい位置
- 飲み込み方
- 鼻呼吸の習慣
これらを一つずつ整えていくことで、口呼吸の改善を目指します。
代表的なMFTトレーニング
家庭でも取り組みやすい代表的なトレーニングをまとめました。
| トレーニング | 目的 |
|---|---|
| リップトレーニング | 唇を閉じる力を強くする |
| 舌の位置トレーニング | 舌を上あごにつける習慣をつくる |
| ポッピングトレーニング | 舌の筋力を高める |
| 鼻呼吸トレーニング | 口を閉じて呼吸する習慣をつける |
これらのトレーニングは、短期間で大きく変わるものではありません。日常生活の中で少しずつ続けることで、口の筋肉の使い方が整っていきます。
トレーニングを続けるポイント
MFTは、正しい方法で継続することが大切です。次のような点を意識すると取り組みやすくなります。
- 毎日少しずつ続ける
- 無理のない回数で行う
- 歯科で方法を確認する
また、鼻づまりなどが原因で口呼吸になっている場合は、耳鼻科での治療が必要になることもあります。歯科と耳鼻科の両方で原因を確認することが大切です。
歯科でのサポート
MFTは、歯科医院で指導を受けながら行うこともあります。歯科では、舌の位置や唇の動き、飲み込み方などを確認し、子どもの状態に合わせたトレーニングを提案します。
口呼吸は、早い段階で気づくことで改善しやすくなることがあります。気になる様子がある場合は、歯科で相談してみると安心です。
参照:日本歯科医学会 小児口腔機能発達評価マニュアル
https://www.jads.jp/assets/pdf/activity/past/hyoukamanyuaru.pdf
第5章 FAQ(よくある質問)
子どもの口呼吸については、保護者の方からさまざまな質問を受けることがあります。ここでは、歯科でよく相談される内容をQ&A形式でまとめました。
Q.子どもの口呼吸は自然に治りますか?
A.軽い口呼吸の場合、成長とともに改善することもあります。しかし、口が開いた状態が習慣になっている場合は、そのまま続くこともあります。口呼吸が長く続くと、舌の位置や唇の筋肉の働きが変わり、歯並びや噛み合わせに影響する可能性があります。気になる様子がある場合は、早めに口の使い方を確認しておくと安心です。
Q.何歳くらいで歯科に相談すればよいですか?
A.はっきりとした年齢の基準があるわけではありませんが、普段から口が開いている状態が続く場合や、前歯の噛み合わせが気になる場合は、小学校入学前後に一度歯科で相談することがあります。子どもの成長に合わせて、口の機能の状態を確認することができます。
Q.口呼吸は歯並びに必ず影響しますか?
A.口呼吸があるすべての子どもに歯並びの問題が起こるわけではありません。ただし、口呼吸が続くと舌の位置や口周りの筋肉のバランスが変わることがあり、歯並びや顎の発育に影響する可能性があります。歯科では歯並びだけでなく、舌の位置や口の機能もあわせて確認することがあります。
Q.口呼吸の原因が鼻づまりの場合はどうすればよいですか?
A.アレルギー性鼻炎などで鼻づまりがある場合は、鼻で呼吸しにくくなり、口呼吸になることがあります。この場合は、耳鼻科での治療が必要になることもあります。歯科では口の機能を確認し、必要に応じて耳鼻科の受診を勧めることもあります。
Q.口呼吸の改善にはどんな方法がありますか?
A.口呼吸の改善には、口の筋肉の使い方を整えるトレーニングが行われることがあります。代表的な方法が、舌や唇の動きを整える MFT(口腔筋機能療法) です。口の機能を整えることで、鼻呼吸の習慣が身につくことがあります。
Q.歯科に相談する目安を教えて下さい。
A.次のような様子がある場合は、歯科で相談すると安心です。
- 普段から口が開いている
- 寝ているときに口呼吸になっている
- いびきをかくことがある
- 前歯が前に出てきた
- 前歯が噛み合っていない
- 食事のときにクチャクチャ音がする
口呼吸は、早い段階で気づくことで改善しやすくなることがあります。気になる様子がある場合は、子どもの成長に合わせて口の機能を確認していくとよいでしょう。
まとめ
子どもの口呼吸は、単なる癖のように見えることがあります。しかし、小児歯科では歯並びや顎の発育、口の機能の発達と関係する可能性があると考えられています。口が開いた状態が続くと、舌の位置や唇の筋肉の働きが変わり、前歯が前に出る、前歯が噛み合わないといった歯並びの変化につながることがあります。
また近年は、食べる・話す・呼吸するなどの口の機能の発達を総合的に評価する「口腔機能発達不全症」という考え方も広がっています。口呼吸は、その確認項目の一つとして注目されています。
口呼吸の改善には、舌や唇の動きを整える MFT(口腔筋機能療法) などのトレーニングが役立つことがあります。日常生活の中で口の使い方を見直すことで、少しずつ鼻呼吸の習慣につながることもあります。
子どもの口がいつも開いている、寝ているときに口呼吸になっているなど気になる様子がある場合は、早めに歯科で相談してみると安心です。成長の段階に合わせて口の機能を確認していくことで、歯並びや口の発達を見守っていくことができます。
記事作成日 2026年3月21日
参考文献
日本小児歯科学会 口腔機能発達不全症の治療
https://www.jspd.or.jp/recommendation/article26/
日本歯科医学会 小児口腔機能発達評価マニュアル
https://www.jads.jp/assets/pdf/activity/past/hyoukamanyuaru.pdf
小児歯科学雑誌 小児の口呼吸に関する実態調査(J-STAGE)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspd1963/41/1/41_140/_article/-char/ja/
The impact of mouth breathing on dentofacial development
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9498581/
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