検索で見かける「入れ歯」と「義歯」って何が違うの?
2025.09.19
ファミリー⻭科
「入れ歯」と「義歯」、この二つの言葉の違いについて疑問をお持ちではありませんか?
結論から言うと、一般的に「入れ歯」と「義歯」は同じものを指します。
ただし、歯科医療の現場では「義歯」がより専門的な総称です。
この記事では、この二つの言葉の明確な違いから、入れ歯の種類、保険適用・自費の違い、ブリッジやインプラントといった他の治療選択肢、さらには入れ歯のメリット・デメリット、正しい手入れ方法まで、欠損歯治療に関するあらゆる疑問を解消。
最適な治療法選びの知識が身につくでしょう。
目次
監修した先生

奈良 倫之 先生
医療法人社団 歯友会 理事長
ファミリー歯科 院長
「入れ歯」と「義歯」の基本的な違いとは
歯科治療において、失われた歯の機能を補うために使用される人工の装置は多岐にわたります。
その中でも、特に「入れ歯」と「義歯」という言葉は、日常会話や医療現場で頻繁に耳にするでしょう。
しかし、これらの言葉が具体的に何を指し、どのような違いがあるのか、明確に理解している方は少ないかもしれません。
ここでは、「入れ歯」と「義歯」の言葉の定義と、それぞれの使われ方について詳しく解説します。
「入れ歯」と「義歯」は同じものを指すのか
結論から言うと、「入れ歯」と「義歯」は、多くの場合において同じものを指すと言えます。
しかし、使われる文脈や言葉のニュアンスには明確な違いがあります。
「義歯」は歯科医療における専門用語であり、より広範な意味合いを持つ一方、「入れ歯」は一般的に広く使われる口語表現であり、特定の種類の義歯を指すことが多いのが特徴です。
歯科医療における「義歯」の定義
「義歯」とは、歯科医療において、欠損した歯や顎の一部を人工的に補う装置全般を指す専門用語です。
日本補綴歯科学会などの専門機関では、「義歯」を口腔内の欠損を補う人工的な装置の総称として定義しています。
そのため、単に「入れ歯」と呼ばれる取り外し可能な装置だけでなく、固定式のブリッジやインプラント、さらには差し歯(クラウン)なども、広義の「義歯」に含まれることがあります。
歯科医師や歯科技工士などの専門家が用いる際には、より正確な情報を伝えるために「義歯」という言葉が選ばれます。
例えば、学術論文や医療現場でのカルテなどでは、「義歯」という表現が用いられるのが一般的です。
一般的に使われる「入れ歯」の定義
一方、「入れ歯」は、一般的に広く浸透している口語表現です。
多くの場合、これは「取り外しが可能な人工の歯」を指します。
具体的には、歯茎の上に装着する「総入れ歯(総義歯)」や、残っている歯にクラスプ(留め具)をかけて使用する「部分入れ歯(部分義歯)」のことを指すことがほとんどです。
日常会話の中で「入れ歯」という言葉を使う場合、通常は「食事の後に外して手入れをするもの」「寝る前に外すもの」といった、取り外し可能な特徴を持つ装置をイメージする人が多いでしょう。
このように、「入れ歯」は「義歯」という広範な専門用語の中の、特に特定の種類の義歯を指す際に用いられることが多いと言えます。
これらの違いをまとめると、以下の表のようになります。
項目 | 入れ歯 | 義歯 |
---|---|---|
使用される場面 | 一般的な会話、口語表現 | 歯科医療の専門用語、学術的な場 |
指す範囲 | 「取り外し可能な人工歯(床義歯)」を指すことが多い | 欠損した歯や顎の一部を補う装置全般(入れ歯、ブリッジ、インプラント、クラウンなど)を指す広義の言葉 |
専門性 | 低い(日常語) | 高い(専門用語) |
「入れ歯」の種類とそれぞれの特徴
「入れ歯」と一口に言っても、患者さんの口腔内の状態や求める機能、審美性、そして予算に応じて、様々な種類が存在します。
ここでは、主に使われる入れ歯の種類とその特徴について詳しく解説します。
総入れ歯(総義歯)とは
総入れ歯は、すべての歯を失ってしまった場合(無歯顎)に用いられる入れ歯です。
上顎または下顎、あるいは両方の歯が一本も残っていない状態の際に、顎の骨の上の歯ぐきに吸着させる形で装着します。
顎の土手全体を覆うように製作され、歯ぐきに見立てたピンク色の床(しょう)と人工歯で構成されます。
総入れ歯は、顎の骨の吸収度合いや唾液の量によって安定性が大きく左右されます。
安定性が高い総入れ歯は、食事や会話の際に外れにくく、快適な日常生活を送る上で非常に重要です。
また、見た目の自然さや発音のしやすさも、患者様が入れ歯に求める重要な要素となります。
部分入れ歯(部分義歯)とは
部分入れ歯は、一部の歯が残っている場合に、失われた歯の部分を補うために使用される入れ歯です。
残っているご自身の歯にクラスプと呼ばれる金属製のバネをかけて固定し、入れ歯が動かないように安定させます。
クラスプ(バネ)の設計や、入れ歯を支える土台となる義歯床の材質によって、様々な種類があります。
部分入れ歯は、残っている歯を支えとして利用するため、総入れ歯に比べて比較的安定しやすいという特徴があります。
しかし、クラスプ(バネ)が見える位置にあると、「見た目が悪い」と感じる方もいらっしゃいます。
また、クラスプ(バネ)をかける歯に負担がかかる為、残存歯の健康状態を維持するための丁寧な口腔ケアと入れ歯のチェックが不可欠です。
保険適用と自費の入れ歯について
入れ歯の製作には、保険診療で製作できるものと、自費診療(自由診療)となるものがあります。
これらは主に使用される材質や製作方法によって区分され、それぞれ機能性、審美性、快適性、そして費用が大きく異なります。
患者様のニーズや口腔内の状態に合わせて、最適な選択肢を歯科医師と相談して決定することが重要です。
レジン床義歯の特徴
レジン床義歯は、保険適用される入れ歯の代表的な種類です。歯科用プラスチック(レジン)を主な材料として製作されます。
項目 特徴 材質 歯科用プラスチック(レジン) 費用 保険適用 メリット
- 比較的安価で製作できる
- 修理や調整が比較的容易
デメリット
- 義歯床に厚みがあるため、装着時の異物感を感じやすい
- バネと入れ歯そのものの歪みで入れ歯が動黄、残った歯や骨にダメージを与える
- 熱が伝わりにくく、食事の温度を感じにくいことがある
- 強度に限界があり、破損しやすい場合がある
- 吸水性があり、変色や臭いの原因となることがある
金属床義歯の特徴
金属床義歯は、自費診療の入れ歯の一つで、義歯床の一部または全体に金属を使用したものです。
主にコバルトクロム、チタン、金などの生体親和性の高い金属が用いられます。
金属を使用することで、レジン床義歯では得られない様々なメリットがあります。
項目 特徴 材質 コバルトクロム、チタン、金などの金属 費用 自費診療(保険適用外) メリット
- 義歯床を薄く製作できるため、装着時の異物感が少ない
- 精度が高く、金属部分が歪まないので、動きにくく、残った歯や骨を痛めにくい
- 複雑な形に加工でき、個々人に合ったベストな設計ができる。
- 熱が伝わりやすいため、食事の温度を感じやすく、美味しく食事ができる
- 強度が高く、耐久性に優れる
- 口腔内が広く感じられ、発音もしやすい傾向がある
デメリット
- 費用が高価
- 修理が難しい場合がある
- 金属アレルギーのリスクがゼロではない(チタンや金はアレルギーリスクが低い)
ノンクラスプデンチャーの特徴
ノンクラスプデンチャーも、自費診療の入れ歯の一つです。
その名の通り、金属製のクラスプ(バネ)を使用しないことが最大の特徴で、特殊な樹脂(ナイロン系樹脂など)で義歯床と一体化して製作されます。
特に審美性を重視する方に選ばれることが多い入れ歯です。
項目 特徴 材質 特殊な樹脂(ナイロン系樹脂など) 費用 自費診療(保険適用外) メリット
- 金属のバネがないため、見た目が非常に自然で審美性に優れる
- 弾力性があり、装着感が良いと感じる方が多い
- 金属アレルギーの心配がない
デメリット
- 費用が高価
- 修理が難しい場合がある、または修理できないこともある
- 素材の特性上、経年劣化で変色や変形のリスクがある
- レジン床義歯と同様に、厚みがある場合があり、熱伝導性も低い
- 強い力で変形するため、長期間使用すると残った歯や骨にダメージを与えてしまう。
- 長期的な安定性や耐久性が金属床義歯に劣る場合がある
入れ歯以外の欠損歯治療の選択肢
歯を失ってしまった場合の治療法は、入れ歯だけではありません。
患者さんの口腔内の状態やライフスタイル、費用に対する考え方などに応じて、様々な選択肢があります。
ここでは、入れ歯以外の主な欠損歯治療について詳しくご紹介します。
ブリッジ
ブリッジは、失われた歯の両隣に残っている歯を削り、橋渡しをするように連結した人工の歯を被せる治療法です。
固定式であるため、ご自身の歯と同じように噛むことができ、取り外しの手間がないのが特徴です。
ブリッジの最大のメリットは、固定式であるため違和感が少なく、比較的短期間で治療が完了する点です。
また、主に銀歯のみになりますが、保険が適用される素材を選べば、費用を抑えることも可能です。
しかし、失われた歯の両隣にある健康な歯を大きく削る必要があるため、その歯の神経を傷つけたり、無くなった歯にかかる力を周りの歯が負担するため、その歯に大きな負担がかかります。
また、連結されているため、歯と歯の間に食べ物が詰まりやすく、適切な清掃を怠ると虫歯や歯周病のリスクが高まることがあります。
素材には、保険適用の銀歯の他に、審美性に優れたセラミックや、強度と生体親和性の高いジルコニアなど、自費治療の選択肢もあります。
インプラント
インプラントは、失われた歯のあった顎の骨に、チタン製の人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工の歯を取り付ける治療法です。
天然の歯とほぼ変わらない見た目と噛む機能を取り戻せることから、「第二の永久歯」とも呼ばれています。
インプラントの大きな特徴は、周囲の健康な歯を削る必要がない点です。
独立して歯を補うため、残っている歯に負担をかけることがありません。
また、顎の骨にしっかりと固定されるため、安定性が高く、硬いものでもしっかりと噛むことができ、発音にも影響を与えにくいとされています。
一方で、インプラント治療は外科手術が必要であり、治療期間が比較的長く、全ての工程が保険適用外となるため費用が高額になる傾向があります。
また、顎の骨の量や質、全身の健康状態によっては、新たに骨を増やす手術が必要になったり、治療が適用できない場合もあります。
治療後も、定期的なメンテナンスと適切なセルフケアが非常に重要となります。
差し歯(クラウン)との違い
「差し歯」という言葉は一般的に使われますが、歯科医療における正式な用語としては「クラウン(被せ物)」や「支台築造(歯の根に土台を作る処置)」を指すことが多いです。
入れ歯、ブリッジ、インプラントが「歯が失われた(抜歯された)部分」を補う治療であるのに対し、差し歯(クラウン)は「歯の根が残っているが、その歯の大部分が虫歯や外傷などで失われたり、神経の治療後に補強が必要になったりした場合」に、残った歯の根の上に人工の歯を被せる治療です。
つまり、差し歯は「歯を失った部分を補う治療」ではなく、「残っている歯を修復・保護する治療」という点で、入れ歯やブリッジ、インプラントとは根本的に異なります。
歯の根が残っているかどうかが、これらの治療法を選択する上での大きな分かれ目となります。
それぞれの治療法の主な違いを以下の表にまとめました。
治療法 | 治療目的 | 適用ケース | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|---|
入れ歯(義歯) | 失われた歯を補う | 複数の歯、またはすべての歯が失われた場合 | 取り外し式 | 治療期間が短い、比較的安価(保険適用の場合あり) | 異物感、安定性の問題、定期的な調整が必要 |
ブリッジ | 失われた歯を補う | 1本~数本の歯が失われ、両隣に健康な歯がある場合 | 固定式 | 違和感が少ない、比較的短期間で治療完了 | 健康な歯を削る、清掃がしにくい、支えの歯に負担 |
インプラント | 失われた歯を補う | 1本~複数の歯が失われた場合(顎の骨の状態による) | 固定式(人工歯根を埋入) | 天然歯に近い見た目と機能、周囲の歯を削らない | 外科手術が必要、治療期間が長い、高額(保険適用外) |
差し歯 (クラウン) |
残っている歯を修復・保護 | 歯の根が残っており、歯の大部分が失われた場合 | 固定式(残存歯に被せる) | 見た目や機能の回復、残存歯の保護 | 歯を削る必要あり、神経の治療が必要な場合がある |
これらの治療法の中から、ご自身に最適な選択をするためには、歯科医師による精密な検査と十分な相談が不可欠です。
それぞれの治療法のメリット・デメリットを理解し、ご自身の口腔内の状態や生活習慣、予算などを考慮した上で、納得のいく治療法を選択することが大切です。
入れ歯のメリットとデメリット
入れ歯(義歯)は、失われた歯を補うための治療法として、長年にわたり多くの患者さんに利用されてきました。
他の欠損歯治療法と比較して、入れ歯には特有の利点と課題があります。
ここでは、入れ歯を選択する際に知っておくべき主なメリットとデメリットについて詳しく解説します。
入れ歯の主なメリット
入れ歯には、患者さんの状況やライフスタイルに応じて様々な利点があります。
特に、身体への負担が少なく、比較的短期間で治療が完了する点が挙げられます。
- 外科手術が不要
インプラントのように顎の骨に人工歯根を埋め込む外科手術が不要なため、体への負担が少なく、持病をお持ちの方や高齢の方でも選択しやすい治療法です。手術に伴うリスクや回復期間を心配する必要がありません。
- 治療期間が比較的短い
型取りから完成、調整まで、一般的に数週間から数ヶ月で治療が完了します。
インプラントのように骨との結合を待つ期間がないため、比較的早く新しい歯を手に入れることができます。
- 費用を抑えられる選択肢がある
保険適用される「レジン床義歯」を選択することで、自費診療のインプラントやブリッジと比較して、初期費用を大幅に抑えることが可能です。
これにより、経済的な負担を軽減しながら歯の機能を回復できます。
- 広範囲の欠損に対応可能
一本の歯の欠損から、多数の歯の欠損、さらには全ての歯を失った「総義歯」まで、幅広い症例に対応できます。
残っている歯の状態に関わらず、柔軟に治療計画を立てられるのが特徴です。
- 取り外しが可能で清掃しやすい
入れ歯は患者さん自身で取り外しができるため、日々の清掃が容易です。
これにより、入れ歯自体を清潔に保ちやすく、残っている天然歯や歯茎の健康維持にもつながります。
- 修理や調整が比較的容易
口腔内の状態は時間とともに変化するため、入れ歯も定期的な調整が必要になります。入れ歯は修理や裏打ち(リベース)、人工歯の追加などが比較的容易に行えるため、長期的に使用していく上で柔軟に対応できます。
入れ歯の主なデメリット
多くの利点がある一方で、入れ歯にはいくつかのデメリットも存在します。
これらの点を理解し、ご自身のライフスタイルや期待する機能性と照らし合わせて検討することが重要です。
- 慣れるまで異物感がある
お口の中に人工物を装着するため、最初は違和感や異物感を感じやすいです。
特に総入れ歯の場合、口蓋(上あご)を覆う部分が大きく、慣れるまでに時間がかかることがあります。
発音しにくくなったり、味覚が鈍くなったりすることもありますが、多くの場合、時間とともに慣れていきます。
- 噛む力が天然歯に劣る
入れ歯は歯ぐきの上に乗せて使用するため、天然の歯やインプラントに比べて噛む力が弱くなる傾向があります。
硬いものや粘着性の高い食べ物を噛むのが難しくなる場合があり、食事の際に工夫が必要になることがあります。
- 定期的な調整や修理が必要
歯ぐき(顎堤)の形は、時間の経過とともに痩せて変化していきます。
これにより、入れ歯が合わなくなり、がたつきや痛みが生じることがあります。
快適に使用し続けるためには、定期的に歯科医院で調整や修理を行う必要があります。
- 審美性に課題がある場合も
特に保険適用の部分入れ歯では、残っている歯に固定するための金属製のバネ(クラスプ)が見えてしまうことがあります。
これが気になる場合は、自費診療のノンクラスプデンチャーや金属床義歯など、審美性を高めた入れ歯を検討する必要があります。
- 顎の骨が痩せる可能性がある
天然の歯は噛む刺激が顎の骨に伝わることで、骨の吸収が抑制されます。
しかし、入れ歯は歯茎の上に乗せるため、この刺激が骨に伝わりにくく、長期的に使用することで顎の骨(歯槽骨)が徐々に痩せていく(吸収される)可能性があります。
これにより、入れ歯が合わなくなり、作り直しが必要になることもあります。
- 残っている歯への負担(部分入れ歯の場合)
部分入れ歯の場合、クラスプをかける支えとなる残りの歯に負担がかかることがあります。
不適切な設計や調整不足は、これらの歯の健康を損なう原因となる可能性もあるため、定期的なチェックと適切な管理が不可欠です。
入れ歯の製作から装着までの流れ
入れ歯(義歯)は、患者様一人ひとりの口腔状態に合わせてオーダーメイドで製作されるため、いくつかの段階を経て完成します。
ここでは、一般的な入れ歯製作のプロセスをご紹介します。
歯科医院での相談と検査
入れ歯治療は、まず歯科医院での丁寧なカウンセリングと精密な検査から始まります。
問診と口腔内診査:
患者様の全身の健康状態、服用しているお薬、過去の歯科治療歴、そして入れ歯に対するご希望や現在のお悩みなどを詳しくお伺いします。
同時に、お口の中の状態(残っている歯の状態、歯茎の健康状態、顎の骨の量や形など)を視診や触診で確認します。レントゲン撮影・CT撮影:
顎の骨の吸収度合いや、残存歯の根の状態などを詳細に把握するために、パノラマレントゲンや歯科用CTスキャンを行うことがあります。これにより、目に見えない部分の情報も得られ、より安全で適切な治療計画を立てることが可能になります。
治療計画の立案と説明:
これらの情報に基づき、歯科医師は患者様に最適な入れ歯の種類(総入れ歯、部分入れ歯、保険適用か自費診療かなど)や治療方法をご提案します。
それぞれの入れ歯のメリット・デメリット、費用、治療期間などについて、患者様が納得できるまで丁寧に説明します。
疑問点があれば、この段階で遠慮なく質問することが重要です。
型取りと試適
精密な入れ歯を製作するためには、お口の中の形を正確に再現する型取りと、完成前の確認作業である試適が非常に重要です。
工程 | 目的 | 内容 |
---|---|---|
精密印象(型取り) | 顎の形、歯ぐき、残存歯の位置などを正確に再現するため。 | まず、患者様のお口に合わせた「個人トレー」と呼ばれる専用の型を製作します。この個人トレーに精密な印象材を盛り、お口の中の粘膜や顎の骨の形、残存歯の位置関係、舌や頬や唇などの動きなどを0.1ミリ単位で正確に型取りします。この型を元に、歯科技工士が入れ歯の土台となる部分を製作します。 |
咬合採得(噛み合わせの記録) | 上下の顎の位置関係や、適切な噛み合わせの高さを決定するため。 | 入れ歯を装着した際に、自然で安定した噛み合わせを実現するために、上下の顎が最も安定する位置や高さを記録します。この際、「咬合床」と呼ばれる蝋(ワックス)でできた仮の装置や、より精密な「ゴシックアーチ描記装置」などを用いることがあります。この工程で決定された噛み合わせが、入れ歯の機能性と快適性を大きく左右します。 |
人工歯の選択と排列 | 患者様の顔貌やご希望に合わせた人工歯を選び、自然な見た目を実現するため。 | 噛み合わせの記録を元に、人工歯の色や形、大きさなどを患者様の顔貌や性別、年齢、そしてご希望に合わせて選びます。その後、歯科技工士が蝋(ワックス)の土台の上に選ばれた人工歯を仮に並べ(排列)、「ろう義歯」と呼ばれる仮の入れ歯を作成します。 |
ろう義歯の試適 | 完成前の入れ歯の見た目、噛み合わせ、発音などを最終確認するため。 | 完成前のろう義歯を実際に患者様のお口に装着し、噛み合わせの高さや位置、見た目の自然さ、発音への影響、装着感などを細かく確認します。患者様ご自身にも鏡を見ていただき、希望や気になる点があればこの段階で修正を依頼できます。この試適の段階で十分に確認・調整を行うことで、完成後の入れ歯に対する不満を減らすことができます。 |
調整と完成
試適で問題がなければ、いよいよ入れ歯の最終製作に入ります。そして、装着後も適切な調整が不可欠です。
入れ歯の完成と装着:
ろう義歯で最終確認が取れたら、それを元に、歯科材料(レジンや金属など)を用いて最終的な入れ歯が製作されます。
完成した入れ歯は、歯科医院で患者様のお口に装着され、最終的な適合状態や噛み合わせを再度確認します。
この際、わずかな調整が必要になることもあります。装着後の調整:
新しい入れ歯は、お口の中の粘膜に当たる部分があるなど、装着直後は多少の違和感や痛みを感じることがあります。
これは、今まで歯がなかった部分に新しいものが加わるため、お口が慣れるまでの自然な反応です。
多くの場合、数回の調整で改善されます。痛みや違和感を我慢せず、必ず歯科医院に連絡し、調整を受けるようにしましょう。
入れ歯は、使用していくうちに徐々に変化するお口の形に合わせて、定期的な調整が必要になることがあります。使用上の注意と手入れの指導:
歯科医師や歯科衛生士から、入れ歯の正しい着脱方法、日常的な清掃方法、保管方法、そして食事の際の注意点などについて詳細な説明があります。
入れ歯を長持ちさせ、お口の健康を維持するためには、これらの指示に従い、適切なケアを行うことが非常に重要です。
入れ歯の正しい手入れと注意点
入れ歯は、失われた歯の機能を補う大切な装置ですが、適切な手入れを怠ると、口腔内の健康を損ねたり、入れ歯自体の寿命を縮めたりする原因となります。
毎日の正しい清掃と定期的な歯科医院でのチェックが不可欠です。
日常的な清掃方法
入れ歯は、ご自身の歯と同じように毎日の清掃が必要です。
食べかすやプラーク(歯垢)が付着すると、口臭の原因になったり、義歯性口内炎などのトラブルを引き起こしたり、残っているご自身の歯に悪影響を与えたりする可能性があります。
清掃のタイミング:
毎食後と就寝前に必ず入れ歯を外して清掃しましょう。
清掃に使用するもの:
- 義歯ブラシ: 入れ歯専用のブラシを使用します。歯ブラシよりも毛が硬く、入れ歯の複雑な形状にフィットしやすいように設計されています。
- 義歯洗浄剤: 細菌の繁殖を抑え、着色や口臭の予防に役立ちます。
- 流水: 基本的な清掃は流水下で行います。
具体的な清掃手順:
入れ歯を外したら、まず流水で全体をよく洗い流し、食べかすやぬめりを取り除きます。
義歯ブラシに水を含ませ、入れ歯の表裏、歯の部分、歯ぐきに当たる部分(床)を丁寧に磨きます。特に、歯と歯茎の境目やクラスプ(バネ)の周りは汚れが残りやすいので念入りに。
義歯洗浄剤を使用する場合は、製品の指示に従い、適切な時間浸け置きします。洗浄剤に浸した後は、必ず流水でよく洗い流してから装着してください。
清掃時の注意点:
入れ歯の清掃には、いくつか注意すべき点があります。
注意点 理由と対策 歯磨き粉は使用しない 一般的な歯磨き粉には研磨剤が含まれており、入れ歯の表面に傷をつけてしまう可能性があります。傷が付くと、そこに細菌が繁殖しやすくなり、汚れが落ちにくくなります。必ず入れ歯専用の義歯ブラシと水、または義歯洗浄剤を使用しましょう。 熱湯に浸さない 入れ歯の材料であるレジン(プラスチック)は熱に弱く、変形する恐れがあります。変形すると、入れ歯が合わなくなり、痛みや不快感の原因となります。必ず常温の水を使用してください。 落下に注意する 入れ歯は衝撃に弱く、落とすと割れたり欠けたりする可能性があります。清掃する際は、洗面器に水を張るか、タオルを敷くなどして、万が一落としても破損しないように工夫しましょう。 就寝時は外す 就寝中も入れ歯を装着していると、歯茎が休まらず、血行不良や炎症の原因になることがあります。また、細菌が繁殖しやすくなります。就寝時は入れ歯を外し、専用の容器に入れた水や義歯洗浄剤に浸して保管しましょう。乾燥させると変形する恐れがあります。 ただし、噛み合わせが安定しない方やいびきを書いてしまう方、睡眠時無呼吸症候群の方などは、歯科医師の指示の元、上顎の入れ歯をつけて眠ってもらう場合もあります。必ず担当歯科医師の指示に従ってください。
定期的な歯科医院でのチェック
ご自身での日常的な手入れに加え、定期的に歯科医院で専門的なチェックを受けることが、入れ歯を長く快適に使うために非常に重要です。
チェックの必要性:
- 適合性の確認: 口腔内の状態は常に変化しており、歯ぐきが痩せるなどで入れ歯が合わなくなることがあります。合わない入れ歯は痛みや不快感、残存歯への負担増、顎関節への影響など様々な問題を引き起こします。
- 口腔粘膜の健康状態の確認: 入れ歯が当たる部分の粘膜に炎症や傷がないかを確認します。
- 残存歯のチェック: 部分入れ歯の場合、残っているご自身の歯の虫歯や歯周病のチェックも重要です。
- 清掃状態の確認と指導: ご自身での清掃では取り切れない汚れがないか確認し、より効果的な清掃方法についてアドバイスを受けられます。
- 修理・調整の必要性の判断: 入れ歯の破損や劣化がないかを確認し、必要に応じて修理や調整を行います。
チェックの頻度:
- 4ヶ月に一度、または少なくとも半年に一度は歯科医院を受診することをおすすめします。歯科医師から指示された頻度に従いましょう。
定期検診でできること:
- 入れ歯の適合状態の確認と調整
- 入れ歯の専門的なクリーニング(超音波洗浄など)
- 入れ歯の修理やリライニング(裏打ち)の相談
- 新しい入れ歯への切り替えや、他の治療選択肢についての相談
- 口腔内の粘膜や残存歯の健康チェック
まとめ
「入れ歯」と「義歯」は、歯科医療における専門用語と一般的に使われる言葉の違いであり、基本的には同じものを指します。
失われた歯を補うための治療法として、入れ歯(義歯)は多様な種類があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットが存在します。
ブリッジやインプラントといった他の治療選択肢と比較検討し、ご自身の口腔内の状態やライフスタイル、費用などを総合的に考慮することが重要です。
最適な治療法を見つけるためには、まずは歯科医院で専門医に相談し、詳細な検査と説明を受けることを強くお勧めします。
担当した診療所

ファミリー歯科
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また、歯友会のミッションである「地域に安心と革新をもたらし、健康を未来へつなぐ」という想いのもと、わかりやすい説明と高精度な治療技術の導入にも力を入れています。