歯周病になりやすい磨き方とは?歯磨きのコツとブルーラジカルによる最新ケア
2025.12.04
ファミリー⻭科
歯周病は、歯の表面に付くプラーク(細菌の塊)が引き金となって起こる慢性的な炎症です。プラークは数百種類の細菌が集まって作る膜状のかたまりで、わずか1日放置するだけで歯ぐきの内側まで広がります。毎日歯磨きをしているつもりでも、歯と歯ぐきの境目にブラシが届いていなければ、細菌は増え続けて炎症を引き起こします。
初期の「歯肉炎」では、歯ぐきの腫れや出血が見られますが、多くは痛みがないため気づきにくい状態です。この段階で適切にプラークを取り除けていないと、炎症が深い部分まで進行し、歯を支える骨が溶けていく「歯周炎」へ移行します。歯周ポケット(歯と歯ぐきのすき間)が深くなるほど細菌がたまりやすくなり、悪循環が続きます。
特に40〜70代は、唾液量の低下や歯ぐきの退縮が重なり、細菌が繁殖しやすい環境になりがちです。磨き残しや、短時間・力任せの磨きクセなども歯周病を悪化させる原因です。
歯周病を防ぐうえで最も重要なのは、毎日の歯磨きでいかにプラークを除去するかです。正しい磨き方を身につけることで細菌の増殖を抑え、進行を食い止めることができます。
目次
監修した先生
奈良 倫之 先生
医療法人社団 歯友会 理事長
ファミリー歯科 院長
第1章 正しい歯磨きの基本 プラークを確実に落とすために
歯周病を防ぐために最も重要なのは、毎日の歯磨きでプラークをどれだけ取り除けるかです。プラークは歯と歯ぐきの境目に最も溜まりやすいため、「どこを狙って磨くか」を意識するだけで清掃しやすくなります。とくに、力任せにゴシゴシ磨く習慣はプラークを落としにくく、歯ぐきを傷つける原因になりかねません。多くの人が無意識のうちに力を入れすぎてしまうので「歯磨きはゆっくり、弱め」を意識しましょう。
正しい磨き方を身につけることで、歯周病の炎症を抑え、再発リスクを大幅に減らせます。
歯ブラシと歯磨き粉の注意点
基本となるのが、歯ブラシの当て方です。歯と歯ぐきの境目に45度の角度でブラシを当て、小刻みに動かすことで、毛先がポケットの入り口に届きやすくなります。
時間は最低でも3分を目安に、1本ずつ丁寧に磨く意識が大切です。また、毛先が広がった歯ブラシではプラークが十分に除去できないため、1〜2か月ごとに交換しましょう。
電動歯ブラシを使う場合も「動かしすぎない」ことがポイントです。機種によってはブラシを当てるだけで磨けるタイプもあり、適切な圧力を守らなければ歯ぐきを傷める可能性があります。特に高齢者は力加減が難しいことがあるため、軽いタッチを意識しましょう。
歯科医院では、歯ブラシの適切な力加減は歯科衛生士が指導します。
歯磨き粉は、泡立ちの強さよりも「成分」で選びます。歯周病が気になる方には、殺菌成分(セチルピレジリウム・CPCなど)や抗炎症成分(グリチルリチン酸など)が含まれたものが向いています。逆に避けたいのは研磨剤が多い歯磨き粉です。力を入れすぎると歯が削れ、歯ぐきを痛める原因になります。
最低限覚えておきたいポイントは以下の4つです。
- 歯と歯ぐきの境目を45度で磨く
- 小刻みに動かし、1本ずつ丁寧に磨く
- 歯ブラシは1〜2か月で交換
- 歯周病向け成分(CPC・抗炎症成分など)を選ぶ
正しいブラッシングは、歯周病治療の基本です。次章では、特に磨き残しが多い部位の清掃法を解説します。
第2章 部位別の磨き残し対策 歯間・奥歯・根面を守る
毎日きちんとお口のケアをしても歯周病が進行してしまうことがあります。どれだけ丁寧に磨いているつもりでも、歯ブラシだけでは物理的に届きにくい場所があり、そこに細菌が残り続けることで炎症が悪化します。
とくに40〜70代では歯ぐきが下がり歯の根元が露出しやすくなるため、汚れが溜まりやすく歯周病リスクを高めます。
磨き残しやすい部位と対策法
| 部位 | 磨き残しが多い理由 | 推奨される対策 |
|---|---|---|
| 歯と歯の間(歯間部) | 歯ブラシの毛先が物理的に届きにくく、プラークの約40%が残りやすいとされる部位 | 歯間ブラシまたはデンタルフロスを併用する。サイズは歯科医院で選ぶ |
| 奥歯(特に奥から2〜3番目) | 頬の内側が張り、ブラシが当たりにくい。溝が深く汚れが残りやすい | 口を大きく開けすぎず軽く閉じ気味で磨く。溝は縦方向の動きも追加。ワンタフト併用も可。 |
| 歯の根元(根面) | 加齢で歯ぐきが下がると根面が露出し、プラークが付きやすい。むし歯にもなりやすい | 歯ぐきのラインに沿って優しく磨く。フッ素配合の歯磨き粉が有効 |
| 部分入れ歯・ブリッジ・インプラント周囲 | 装置の縁や固定部に汚れが溜まりやすく、歯周病菌が残りやすい | 専用ブラシやスーパーフロスを使用。通常の歯より丁寧な清掃を行う |
出典:日本歯科医師会 歯の学校Vol.74 ハブラシだけでは、歯垢を落としきれないってホント?
https://www.jda.or.jp/hanogakko/vol74/nazenani.html#article01
最も磨き残しが多いのは「歯と歯の間」です。歯ブラシの毛先はこの部分に入り込みにくく、歯間ブラシやデンタルフロスを併用しなければ、プラークの約40%が残るという報告もあります。デンタルフロスと併用することで除去率は1.5倍、約86%まで上がるという統計があります。
歯間ブラシは歯の隙間が広い方に向いていますが、サイズが合っていないと効果が出にくい傾向があります。歯科医院で自分に合った太さを選んでもらいましょう。
奥歯(特に奥から2番目と3番目)は、ブラシが届きにくい場所です。口を大きく開けすぎると頬の内側が張り、ブラシが当たりにくくなるため、軽く閉じ気味の状態で磨くのがコツです。また、噛み合わせの溝には細菌が溜まりやすく、横方向だけでなく縦方向にもブラシを動かすと、より歯垢を除去しやすくなります。
加齢に伴い増える「根面カリエス(歯の根のむし歯)」にも注意が必要です。歯ぐきが下がるとエナメル質がない部分が露出し、プラークが付着しやすくなります。歯周病に気づかないまま進行してしまうケースが多いため、根元を丁寧に磨く習慣が欠かせません。
ブラッシングが難しい場合は、毛先の房だけ付いた小さな歯ブラシ(ワンタフト)を併用すると良いでしょう。
部分入れ歯やブリッジ、インプラントがある場合、その周囲は特に歯垢が溜まりやすくなります。装置の縁や固定部の下に汚れが残りやすいため、より念入りなケアを続けましょう。
次章では、セルフケアだけでは届かない部分を補うために欠かせないプロフェッショナルケアと、最新の除菌治療ブルーラジカルについて解説します。
第3章 セルフケアで届かない部分は歯科医院で徹底洗浄
どれだけ丁寧にケアをしても、毎日の歯磨きだけでは限界があります。セルフケアでは歯周ポケット(歯と歯ぐきのすき間)の深部には毛先が届かず、細菌が残ってしまうためです。そのため定期的に歯科医院で洗浄することが歯周病対策に欠かせません。
歯科医院で行われる洗浄ケアの代表格は、スケーリングやSRP(スケーリング・ルートプレーニング)です。歯周ポケット内に付着した歯石や汚れを専用器具で徹底的に取り除く処置で、炎症の予防や症状の改善を促します。しかし、物理的に取り除ける細菌には限界があり、細胞壁の内部に潜む細菌までは除去できません。
そこで近年注目されているのが 「ブルーラジカル」です。歯周ポケットに光に反応する薬剤(過酸化水素水)を注入し、特定波長の光を照射することで活性酸素を発生させる治療法です。活性酸素は細菌の細胞膜に取り付いて酸化させ破壊する作用があり、高い殺菌力が期待できます。抗生物質を使用しないため耐性菌リスクがなく、痛みや出血もほとんどありません。処置時間も短く、日常生活への影響が少ない点が特徴です。
とくに初期〜中等度の歯周病では、スケーリング・SRPに加えてブルーラジカルを併用することで、細菌数の減少と再発予防が期待できます。セルフケアでは届かない領域を補い、歯周組織の回復を後押しする治療として、選択肢のひとつに挙げられます。
歯周病を長く安定させるには、「セルフケア」と「プロフェッショナルケア」を組み合わせた二本柱の治療が欠かせません。歯周病の症状が安定しても、定期的に歯科医院を受診しましょう。
第4章 食事・喫煙・睡眠で変わる、生活習慣で変わる歯周病リスク
歯周病は細菌が原因で起こりますが、急速に悪化するか、ゆっくり悪化するかの差は生活習慣に左右されます。どれだけ丁寧に歯を磨いていても生活習慣を改善しないと、治療効果が安定せず再発を繰り返します。
ここでは、特に影響が大きい4つの生活習慣をリスト形式で整理し、それぞれが歯周病にどのように作用するのかを解説します。
1. 糖質の多い食生活
• 甘い飲み物・間食の回数が多い
→ 細菌のエサが豊富な環境になり、細菌が増えやすくなります。歯ぐきの炎症が治まりにくくなり、歯周病の悪化につながります。
• 噛む回数が少ない食事が多い
→ 唾液の分泌量が減り、口の自浄作用が低下します。唾液には抗菌作用があり、分泌量が少ないと細菌が活発化します。
2. 喫煙
• 歯ぐきの血流が低下する
→ ニコチンが血管を収縮させ、歯ぐきに酸素や栄養が届きにくくなります。炎症が治りにくい状態が続きます。
• 歯ぐきの腫れや出血が目立ちにくくなる
→ 血行が悪い歯ぐきは、腫れや出血が目立ちにくくなります。見た目では健康そうでも内部では骨の破壊が進行していることがあります。歯周病は自覚症状が乏しいですが、喫煙習慣が続くとわずかな自覚症状すら感じにくくなります。
3. 睡眠不足・ストレス:免疫の低下を招く
• 抵抗力の低下で炎症が治まりにくい
→ 睡眠不足は免疫力が弱まり、細菌抵抗性が下がりやすくなります。そのため歯ぐきの炎症が長引きます。
• ストレスによるホルモン変化で細菌が増えやすくなる
→ 交感神経が優位になると唾液が減り、口が乾きやすくなります。唾液が減ると口腔内の殺菌能力が低下し、細菌が増殖しやすくなります。
4. 口呼吸の習慣
• 口の乾燥を引き起こす
→ 口呼吸を続けると唾液が渇きやすく、歯ぐきの防御機能が低下します。乾燥した環境は細菌が増えやすく、歯周病を悪化させます。
• 睡眠中の無意識な口呼吸が原因になることも
→ マスク生活や鼻づまりで習慣化していることが多く、気づかないまま炎症が進んでいることがあります。マスク着用時は鼻で呼吸することを意識しましょう。
生活習慣は歯周病の悪化を左右する
歯周病の治療は生活習慣が鍵です。どれほど丁寧に磨いても治療しても、生活習慣が改善しないと歯周病は再発しやすくなります。
歯周病治療を安定させるためには、歯磨きや歯科治療に加えて、食事習慣、禁煙、睡眠、口呼吸から鼻呼吸を心がけましょう。いきなりすべて改善は難しいかもしれません、実践しやすいところから改善していくことをおすすめします。
まとめ
歯周病は、静かに進行する慢性炎症の病気です。しかしその多くは、毎日の歯磨きと適切なケアである程度は予防、改善できることが分かっています。
「歯と歯ぐきの境目を丁寧に磨く」「歯間ブラシやフロスを併用する」など、基本的なセルフケアだけでも細菌量を大きく減らすことができます。
しかしセルフケアには限度があり、歯周ポケットの深部や装置の周囲は歯ブラシだけでは清掃が難しいのも実情です。歯科医院でスケーリングやSRP、ブルーラジカルを併用することで、再発予防の効果が高まります。
歯周病を長く安定させるためには、セルフケア・プロフェッショナルケア・生活習慣の3つをバランスよく整えて、初めて実現します。
正しい磨き方と適切な治療、生活習慣の見直しを続けることが、歯周病から歯を守る最も確実な方法です。今日からできる小さな習慣を積み重ね、健康な歯ぐきを維持していきましょう。
作成日 2025年11月27日
参考文献
日本歯科医師会 歯の学校Vol.74 ハブラシだけでは、歯垢を落としきれないってホント?
https://www.jda.or.jp/hanogakko/vol74/nazenani.html#article01
担当した診療所
ファミリー歯科
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千葉県東金市で30年以上にわたり、地域の皆さまに寄り添った歯科医療を提供してきたクリニックです。
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担当制による継続的なサポート体制を整え、安心して通える環境づくりに取り組んでいます。
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