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今日から始める歯周病予防 正しい磨き方・食生活・定期検診のポイントを解説

2025.12.06

ファミリー⻭科

今日から始める歯周病予防 正しい磨き方・食生活・定期検診のポイントを解説

歯周病は、日本人の成人の約7〜8割が抱えていると言われる、ごく身近な病気です。30代の方でも3人に2人は発症していると言われています。
しかし、初期には痛みや腫れといった自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに静かに進行していくのが歯周病の特徴です。歯ぐきの赤みや出血といった軽いサインを放置すると、やがて歯を支える骨が徐々に溶け、最終的には歯を失います。治療が難しくなる前に「気づく」「防ぐ」ことが、歯周病予防のいちばんの目的です。

予防の中心となるのは、毎日のセルフケアと定期的な歯科医院でのチェックです。とくに歯と歯ぐきの境目に溜まる歯垢、プラークの除去が重要です。プラークは数百種類の細菌が集まってできる膜で、歯周病の原因になります。細菌の増殖を抑えるには、正しい歯磨きや生活習慣の改善が欠かせません。日々のケアに加えて、早期発見につながる定期検診を受けることで、重症化する前に歯周病を抑えることができます。

近年は、細菌を光で除去する「ブルーラジカル」といった補助的なケアも登場し、予防の選択肢は広がっています。ただ、基本となるのはあくまでプラークをためない生活習慣です。予防の積み重ねが、未来の歯と健康を守る大きな力になります。

出典:日本歯周病学会 歯周病Q&A 歯周病は何歳くらいから気をつければよいのでしょうか?
 https://www.perio.jp/qa/prevention/

 

監修した先生

奈良 倫之先生

奈良 倫之 先生

医療法人社団 歯友会 理事長
ファミリー歯科 院長

第1章 歯周病が起こる理由─知っておきたい意外な理由

歯周病を効率よく予防するためには、まず「なぜ歯ぐきに炎症が起こるのか」を正しく理解することが欠かせません。歯周病は、歯と歯ぐきの境目に溜まる“プラーク(細菌の膜)”を放置することで発症します。プラークは食べかすではなく、数百種類の細菌が作り出す粘着性の膜で、わずか数時間で形成されます。歯磨きで取りきれないプラークが蓄積すると細菌が毒素を放出し、歯ぐきが腫れたり出血する「歯肉炎」へと進行していきます。

しかし、多くの人はこの段階で痛みを感じないため、炎症を放置しがちです。歯肉炎が長期間続くと、プラークは唾液中のミネラルと結びついて硬い“歯石”となり、自分では除去できなくなります。歯石の表面には細菌がさらに定着しやすく、炎症は慢性化し、やがて歯を支える骨(歯槽骨)が破壊されていきます。ここまで進んだ状態が「歯周病」です。

こうした進行を止めるためには、細菌の増殖を防ぐ日々のセルフケアと、早期発見につながる歯科医院での検査が欠かせません。

歯周病を引き起こす細菌と歯石のしくみ

プラークの細菌が放つ毒素は、歯ぐきに炎症を起こす主な原因です。炎症が続くと歯ぐきが腫れ、歯磨きで出血しやすくなります。さらに炎症が長期化すると、歯を支える骨が少しずつ溶けて歯が揺れやすくなります。
特に歯石は厄介で、一度できると歯ブラシでは取れず、専門的な器具による除去(スケーリング)が必要になります。

生活習慣や体質も進行を早める

歯周病は細菌だけの問題ではありません。基礎疾患や生活習慣が乱れると炎症が悪化しやすくなります。

  • 喫煙 歯ぐきの血流を悪化させ、治癒力を下げる
  • 糖尿病 免疫力が低下し、炎症が治まりにくい
  • ストレス・睡眠不足 免疫機能が低下し、細菌が優位になる
  • 口腔乾燥 唾液が減ると自浄作用が弱まり、細菌が増えやすい

こうした要因が重なると歯周病は進行しやすくなり、軽度でも短期間で中等度へ進むことがあります。

近年、歯周病は心血管疾患や糖尿病の悪化、早産など全身の病気とも関連することが明らかになっています。口の病気にとどまらない、全身の疾患に繋がることも理解しましょう。

第2章 セルフケアで防ぐ──今日からできる歯周病予防の基本

歯周病予防の中心となるのは、毎日のセルフケアを丁寧に積み重ねることです。歯周病は細菌による慢性的な炎症のため、原因となるプラークをどれだけ確実に取り除けるかが予防の鍵です。特別な技術が必要なわけではありませんが、「磨いているつもり」では不十分になりやすいため、正しい方法を理解したうえで習慣化することが大切です。

正しい歯磨きの“当て方”と“順番”を習慣に

歯磨きは、ただ力強く磨けば良いわけではありません。むしろ強く磨きすぎると、歯ぐきを傷つけて退縮を引き起こし、歯周病を悪化させかねません。歯磨きのポイントは、毛先を歯と歯ぐきの境目に45度の角度で当て、小刻みに動かすことです。意識してもつい強く磨きがちなので、定期的に歯科医院でブラッシング指導を受けることをおすすめします。
歯ぐきの縁には細菌が溜まりやすいため、このラインを狙って毛先をやさしく入れ込むイメージで磨きましょう。特に奥歯の頬側・舌側は磨き残しが多いエリアで、意識して磨くように心がけましょう。

また、磨く順番を決めて習慣化することで、磨き残しを減らせます。
たとえば前歯→奥歯の外側→内側→噛む面、と流れを固定すると、全体をムラなく磨けます。

歯間ケアの徹底─フロスと歯間ブラシの役割

歯ブラシだけでは、歯間のプラークの約40%が残ると言われています。歯と歯の間は細菌が最も繁殖しやすいため、デンタルフロスや歯間ブラシは歯周病予防に欠かせないツールです。

  • デンタルフロス 細い隙間の清掃に向く
  • 歯間ブラシ 隙間が広がり始めた部分に効果的

特に歯間ブラシはサイズ選びが重要で、大きすぎると歯ぐきを傷つけ、小さすぎると汚れが取れません。歯科医院で適切なサイズを確認してもらいましょう。

出典:日本歯科医師会「歯の学校」vol.74
 https://www.jda.or.jp/hanogakko/vol74/nazenani.html#article01

生活習慣の見直しで炎症を抑える

歯周病は生活習慣の影響も大きく受けます。以下の習慣を整えることで、細菌の増殖や炎症の悪化を防ぐことができます。

  • 間食を減らす プラークが作られる回数を減らす
  • 砂糖の多い飲料を控える 糖類は細菌の栄養源となりやすい
  • よく噛む習慣をつける 唾液分泌が増え、自浄作用が働く
  • 禁煙・減煙を目指す 血流が改善し、治癒力が向上
  • 睡眠・ストレス管理 免疫力の低下を防ぐ

そして、近年は自宅ケアの補助として、歯周病菌を光で除去する「ブルーラジカル」という選択肢も登場しています。薬剤耐性の心配が少なく、炎症を起こしやすい細菌を狙って除去できるため、セルフケアで炎症が繰り返しやすい人が補助的に用いるケースがあります。ただし、基本はあくまで歯磨き・歯間ケア・生活習慣の改善であり、ブルーラジカルなどはそれらを補う位置づけの治療法です。

第3章 歯科医院での予防ケア──専門的な清掃と早期発見のメリット

歯周病は「気づきにくく、静かに進む」性質があり、セルフケアだけでは早期発見が難しいことがあります。歯科医院で専門的な器具を使ったクリーニングや検査を定期的に受けて、早い段階で取り除くことができます。ここでは歯科医院で行われる予防ケアの内容を表にまとめて整理します。

歯科医院での予防ケア

ケア内容 目的・特徴 どんな人に必要か メリット
スケーリング(歯石除去) 歯ブラシでは取れない歯石を専用器具で除去 歯石が付着しやすい人、出血がある人 炎症の原因を確実に除去できる
SRP(ルートプレーニング) 歯周ポケット内の歯石・感染した根面を清掃・平滑化 中等度〜重度の歯周病が疑われる人 細菌の温床を取り除き、炎症を抑えられる
PMTC(プロによるクリーニング) プラーク・バイオフィルムを機械的に除去 着色・磨き残しが気になる人、健康維持目的 仕上がりが滑らかになり、再付着を防ぎやすい
歯周ポケット検査 歯ぐきの溝の深さを測定し、進行度を把握 自覚症状がない人を含め全員 早期発見・早期介入につながる
レントゲン検査 骨の状態・歯石の深さを確認 中等度以降、骨吸収が気になる人 見えない部分の炎症を把握可能
メインテナンス(3〜6ヵ月ごと) 再発を防ぐための定期ケア 歯周病経験者、リスクが高い人 良好な状態を長く維持できる

歯科医院で行う予防ケアは、家庭では届かない深い部分の汚れや歯石を確実に除去できます。とくに歯周ポケットや骨の状態は自分では確認できないため、歯周ポケット検査やレントゲン検査によって進行度を把握し、早期治療につながります。定期的に歯石を除去するとプラークの再付着を防ぐことができ、歯ぐきの健康を長く保ちます
ブルーラジカルはスケーリングでは取り切れない細菌を殺菌する補助的治療で活用されることがあります。

第4章 年代・体質・生活背景によって変わる予防戦略

歯周病は「誰にでも起こりうる病気」ですが、発症しやすさや進行のスピードは年代や体質、生活環境によって大きく異なります。自分の状況に合わせた予防方法を選ぶことで、より効率的に炎症を抑え、歯ぐきや骨の健康を維持しやすくなります。本章では、年代別・リスク別に予防戦略を整理し、生活背景に応じた実践ポイントを紹介します。

20〜40代──“炎症の芽”を早く見つけて潰す時期

若い年代は歯周病があっても自覚症状に乏しく、「歯ぐきが腫れていても気づかない」ことがよくあります。健康な状態だからこそ、初期の炎症を見落とさないことが予防の要になります。

  • 正しい歯磨きと歯間ケアの習慣づけ
  • 半年に1回は定期検診を
  • ストレス・睡眠不足による免疫低下に注意
  • 妊娠期は歯ぐきの炎症が出やすいため、早めの受診を

特に妊娠中はホルモンバランスの変化で歯肉炎が起こりやすく、早産との関連も指摘されています。妊活中・妊娠中の女性はできる限り早い段階で歯科医院を受診し、航空ケアを行うことをおすすめします。できれば妊活中がベストの時期です。

50〜60代─“歯周病が進行しやすい年代”の守り方

50代以降は歯周病が一気に進みやすくなる年代です。加齢による免疫力の低下、歯ぐきや骨の再生力の低下などが重なる時期だからです。若いころと同じケアをしていても、炎症が治りにくくなる傾向があります。

  • 1日2の丁寧なブラッシング
  • 就寝前に歯間ケアは必須
  • 定期検診は3〜4ヶ月ごとの短めの間隔で
  • 糖尿病・高血圧など生活習慣病の管理を徹底

この年代では、「少し腫れている」「たまに出血する」といった軽い症状でも進行のサインであることが多く、注意が必要です。

高齢期─“自分のペースで続けられるケア”が重要に

60代以上の高齢になると、手先が動かしにくくなる、口が乾きやすくなるなど、歯周病のリスクが増える条件がさらに重なります。頑張りすぎるケアでは続かなくなるため、「無理なく続けられる方法」を選びましょう。

  • グリップの太い歯ブラシや、電動歯ブラシの使用
  • 唾液を増やすための保湿ジェル・口腔保湿剤の活用
  • 入れ歯の清掃とフィット調整
  • 家族や介護者によるサポートケア

口腔乾燥が強い場合は、細菌が増えやすく炎症の治りが悪くなるため、保湿ケアを併用することで歯ぐきの状態が安定しやすくなります。

リスクを抱える人の特別な予防戦略

以下の人は世代を問わず、歯周病が悪化しやすいため注意が必要です。

  • 喫煙者 血流障害により治りが遅く、進行が速い
  • 糖尿病患者 血糖コントロールが悪いと炎症が治まりにくい
  • 口腔乾燥のある人 唾液不足で細菌が繁殖しやすい
  • 免疫が低下しやすい人 ストレス・睡眠不足・服薬の影響

こうした人では、歯科医院でのメインテナンス頻度を高めたり、ブルーラジカルなどの補助的除菌を取り入れたりすることで、炎症の再燃を抑える効果が期待できます。

第5章 ついやりがちな失敗─予防効果を下げないために気を付けること

歯周病予防は、正しい知識を持って取り組めば確実に効果を得られます。しかし、多くの人が“思い違い”や“間違った習慣”のせいで、予防効果を十分に発揮できていません。本章では、特に多い失敗パターンをリスト形式で整理し、それぞれの理由や正しい対処法を解説します。

間違い① 強く磨けばしっかり落ちると思っている

歯周病が気になると、つい力任せにゴシゴシ磨いてしまいがちです。しかし、強すぎるブラッシングは歯ぐきを傷つけ、退縮を進めてしまいます。毛先が歯と歯ぐきの境目に軽く触れる程度の圧で、小刻みに磨くことが細菌を落とす一番の方法です。

間違い② 歯石を自分で取れると思っている

歯石は唾液中のミネラルと結びついて硬くなった石のような塊で、家庭でのケアでは除去できません。無理に器具を使うと歯ぐきを傷つけ、根面を削ってしまう危険があります。歯石は必ず歯科医院で除去してもらいましょう。

間違い③ 出血は「磨きすぎ」だと思い込む

実際には、出血の多くは「磨きすぎ」ではなく“歯ぐきの炎症”が原因です。炎症部分は血流が豊富になっているため、軽い刺激でも出血します。出血が続く場合は、歯ぐきの炎症が進んでいるサインと考え、歯間ケア・丁寧な歯磨きを行い、早めに歯科医院を受診しましょう。

間違い④ 市販のうがい薬だけで予防できると思う

洗口液は口臭対策や一時的な殺菌には役立ちますが、歯周病の原因である「バイオフィルム(細菌の膜)」は薬剤が浸透しにくく、根本的な除去には繋がりません。歯垢除去は歯磨きと歯間ケアが不可欠です。洗口液だけに頼ると、炎症が進んでいるのに気づかないまま悪化する恐れがあります。

間違い⑤ 症状が消えたら治ったと思い込む

一時的に腫れが引き、出血が止まったとしても、それは治ったわけではありません。炎症が落ち着いた状態にすぎないことは意識しましょう。歯周病は慢性炎症で、適切なケアを続けなければ再発しやすい病気です。症状が安定しても定期メインテナンスを受け、炎症の再燃を防ぎましょう。

間違い⑥ 電動歯ブラシを使えば安心だと思う

電動歯ブラシは正しく使えば高い予防効果がありますが、磨き残しやすい箇所や歯間の細菌は電動ブラシだけでは取り切れません。デンタルフロス・歯間ブラシとの併用が口腔ケアの基本です。

間違い⑦ 喫煙の影響を軽く考えてしまう

喫煙は歯周病の最大のリスク因子のひとつです。ニコチンの作用で血流が悪化し、炎症が見えにくくなるため、症状が出にくいまま進行してしまいます。禁煙は予防の大きな柱になります。

間違い⑧ 新しい治療を使えば予防は十分だと思う

近年は、歯周病菌を光で除去する「ブルーラジカル」などの補助的ケアが広がっていますが、これは補助的な除菌手段です。基本となるのは、ブラッシング・歯間ケア・歯石除去・生活習慣の見直しです。最新技術に頼りすぎても、基本ができていなければ予防効果は得られません。

歯周病予防の効果を最大限に引き出すには、思い込みや誤解を正し、基本のケアを継続することが不可欠です。強く磨くことや市販の洗口液だけに頼ることは、かえって炎症を悪化させる原因になります。出血や腫れがあるときは“治っている途中”ではなく“炎症が進んでいるサイン”と捉え、早めに対処することが大切です。ブルーラジカルのような新しい技術もありますが、基本のケアを丁寧に積み重ねることが最も効果的な予防策です。

まとめ 歯周病予防は“毎日の積み重ね”が未来の口腔健康を守る

歯周病は、自覚症状がほとんどないまま静かに進行する病気です。しかし、原因はプラークであることが分かっています。適切なプラーク除去を習慣化することで進行を抑え、健康な歯ぐきと骨を長く維持することができます。予防の中心となるのは、歯と歯ぐきの境目を丁寧に磨くブラッシング、歯間のプラークを確実に落とすフロス・歯間ブラシ、そして生活習慣の改善です。これらの地道なケアが、最も強力な予防手段になります。

定期的な歯科医院でのメインテナンスは、セルフケアでは届かない部分を徹底的に清掃し、早期発見・早期治療に繋がります。出血や腫れといった軽い症状でも歯周病の進行サインである場合が多く、専門的な検査やクリーニングを受けることで悪化を防げます。

近年は、歯周病菌を光で除去する「ブルーラジカル」といった補助的な技術も登場し、予防の選択肢が広がっています。ただし、これは“基本ケアを支える補助的な方法”であり、中心となるのは日々のセルフケアと定期検診です。

今日の小さな積み重ねが、5年後・10年後の歯を守る大きな力になります。自分の生活に合った予防習慣を身につけ、長く健康な口腔環境を維持していきましょう。

 

作成日 2025年11月27日

参考文献

日本歯周病学会 歯周治療のガイドライン 2022
 https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_2022.pdf

日本歯科医師会 歯の学校
 https://www.jda.or.jp/hanogakko/vol81/keyperson.html

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