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入れ歯の臭いはなぜ起こる?原因と自宅でできる対策、受診目安を解説

2026.02.28

ファミリー⻭科

入れ歯の臭いはなぜ起こる?原因と自宅でできる対策、受診目安を解説

入れ歯を使っていると、毎日きちんと洗っているはずなのに臭いが気になる、外したときに独特の臭いがすると感じることがあります。周囲に気づかれていないか不安になり、人と話すことに消極的になる方も少なくありません。

入れ歯の臭いは、細菌の増殖や清掃状態が関係していることが多いと考えられます。厚生労働省のe-ヘルスネットでは、口臭の主な原因は口腔内細菌が産生する硫黄成分(揮発性硫黄化合物)であると説明されています。入れ歯の臭い対策は、入れ歯から原因菌を減らすことです。

日本義歯ケア学会の専門ガイドラインでも、入れ歯表面に付着するデンチャープラークの掃除が重要と示されています。入れ歯の臭いは洗浄が不十分なときやケア方法が合わないと、臭いを感じやすくなります。適切なケアで原因菌を取り除けば徐々に落ち着くことがあります。

本記事では入れ歯が臭う仕組み、日常で実践できる対策と歯科医院での対応を解説します。

参照:
厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の治療・予防」

https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-07-002.html

日本義歯ケア学会「義歯ケア専門ガイドライン」
https://www.jdenturecare.com/_userdata/guideline/professional.pdf

 

監修した先生

奈良 倫之先生

奈良 倫之 先生

医療法人社団 歯友会 理事長
ファミリー歯科 院長

第1章 入れ歯の臭いを起こす4つの原因

入れ歯の臭いは、突然強くなるものではなく、日々の小さな汚れの蓄積から始まります。臭いが発生する原因を理解することで、対策が見えてきます。

デンチャープラーク(歯垢)の蓄積

入れ歯の表面には、目に見えない細菌の膜が形成されます。これをデンチャープラークと呼びます。通常の歯と同じように、入れ歯にも食べかすや唾液中の成分が付着し、細菌が増殖します。細菌はタンパク質を分解する過程で揮発性硫黄化合物を産生します。これが口臭の主な原因です。

日本義歯ケア学会の専門ガイドラインでは、入れ歯は天然歯以上にプラークが付着しやすいこともあるとされています。プラークを確実に取り除くためにブラシ掃除(機械的清掃)と入れ歯洗浄剤(化学的洗浄)の併用を推奨しています。

参照:日本義歯ケア学会「義歯ケア専門ガイドライン」
 https://www.jdenturecare.com/_userdata/guideline/professional.pdf

カンジダ菌の増殖と粘膜の炎症

入れ歯を長時間装着し続けると、口腔内が湿ったままになり、汚れが溜まりやすくなります。その結果、カンジダ菌の増殖を促しやすくなります。

カンジダ菌とはカビ(真菌)の一種で、口腔内や皮ふなどにいる常在菌です。ふだんはほとんど症状を起こしませんが、カンジダ菌が増えると義歯性口内炎を起こすことがあります。口内炎で粘膜に炎症が起きると細菌や真菌がさらに増え、臭いが強くなることがあります。

夜間も入れ歯を装着したままにしていると、炎症リスクはさらに高まります。学会資料でも、粘膜の休息時間を確保することが推奨されています。

入れ歯の素材

保険診療で一般的なレジン床の入れ歯は、樹脂素材でできています。樹脂は微細な孔があり、水分や臭い成分を吸収しやすい性質があります。そのためレジン床の入れ歯は臭い対策が欠かせません。

一方、金属床は表面が滑沢で、汚れが付着しにくいのが特徴です。ただし、どの素材であっても清掃不足で細菌が付着したままだと臭いは発生します。

ノンメタルクラスプデンチャーも審美性に優れていますが、弾性樹脂は細かな傷が入りやすく、汚れが残りやすいことがあります。素材の違いを理解し、適切な清掃を続けましょう。

口腔内トラブル

入れ歯を清潔に保っても、残存歯の歯周病や虫歯、舌苔(ぜったい)が原因で臭いが出ることがあります。舌苔や歯周病は口臭の原因になります。入れ歯だけを洗っても改善しない場合は、歯磨きや舌磨きなど、口腔ケアを見直しましょう。歯科医院では歯科衛生士が適切な歯磨き法を指導します。

第2章 入れ歯の臭いを防ぐためにできること

入れ歯の臭いは、汚れやプラークを取り除き、清潔を保つことで改善につながります。特別な処置よりも、毎日の基本的な管理を丁寧に続けることが欠かせません。日本義歯ケア学会の専門ガイドラインでも、機械的清掃と化学的洗浄の併用が推奨されています。ここでは具体的な実践ポイントを整理します。

毎日のブラシ掃除(機械的清掃)を丁寧に行う

毎日欠かさず行うべき入れ歯ケアは入れ歯専用ブラシによる清掃です。流水で床の内面や人工歯の裏側まで丁寧に磨きます。特に粘膜と接触する部分は汚れが残りやすいため、意識して掃除しましょう。

注意したいのは、歯磨きのように歯磨き粉を付けて洗わないことです。一般的な歯磨き粉には研磨剤が含まれることが多く、入れ歯表面に微細な傷をつける可能性があります。傷が増えると細菌が付着しやすくなるため、歯磨き粉の使用は避けましょう。

入れ歯は口から外して磨きましょう。口の中で軽くすすぐだけでは、汚れが取り除けません。

洗浄剤を併用して衛生管理

ブラシ掃除だけでは、目に見えない細菌やカンジダ菌を取り除くことは難しい場合があります。ブラシ掃除の後に入れ歯洗浄剤に漬け置くと消毒になり、臭いが徐々に弱くなります。

日本義歯ケア学会のガイドラインでは、入れ歯洗浄剤(化学的洗浄)の有効性が示されています。特に就寝中に浸漬する方法は、細菌管理に有効です。しかし、洗浄剤だけを使っても汚れは落ちません。面倒なのでついブラシ掃除を省きたくなるかもしれませんが、入れ歯はブラシ掃除をしてから洗浄液に漬けましょう。

熱湯消毒や強い漂白剤の使用は、入れ歯の破損や変形、劣化の原因になります。製品の使用方法を守り、安全な消毒を行いましょう。

夜間は外して粘膜を休ませる

入れ歯を24時間装着し続けると、口腔内は常に締め付けられるような状態になります。このような環境が続くと、細菌やカンジダ菌の増殖を促します。

夜間は入れ歯を外し、粘膜に休息時間を与えることが推奨されています。外した入れ歯は乾燥させず、保管容器などに張った水に入れて保管します。

口腔内全体を清潔に保つ

入れ歯だけを洗っても、残存歯や舌に汚れが残っていれば臭いは改善しません。厚生労働省e-ヘルスネットでは、舌苔や歯周病が口臭の主な原因になると示されています。

残っている歯のブラッシングや歯周病の治療、舌の清掃、定期的な歯科受診が口臭予防につながります。入れ歯と口腔内はどちらも日常的なケアが欠かせません。入れ歯の洗浄ばかり注力せずに、適切な口腔ケアも併せて続けましょう。

入れ歯の臭い対策はシンプルなものばかりで、決して難しいことではありません。基本を見直すだけで、徐々に改善に向かうでしょう。

第3章 入れ歯の種類と素材による臭いの違い

入れ歯の臭いは、素材や構造の違いでも影響を受けます。もちろん、どの入れ歯であっても適切に管理されていれば強い臭いが出ることを減らせます。しかし、素材の特性を理解しておくと、日常のケアの意識が変わります。

入れ歯の臭いは、表面の性質、吸水性、傷の入りやすさと関係しています。素材によって汚れの付き方が異なるためです。

主な入れ歯の種類と特徴

種類 素材の特徴 臭いへの影響 ケアのポイント
レジン床入れ歯(保険) 樹脂製。軽量だが吸水性あり 微細な孔に汚れや臭い成分が残りやすい 毎日の丁寧なブラッシングと洗浄剤併用
金属床入れ歯 床部分が金属で滑沢 汚れが付着しにくい ブラッシングを基本に継続管理
ノンメタルクラスプデンチャー 弾性樹脂で審美性が高い 表面に細かな傷が入りやすい 強いブラッシングを避け、丁寧に清掃

レジン床入れ歯の特徴

保険診療で多く使われるレジン床入れ歯は、樹脂素材のため軽く扱いやすいのが利点です。一方で、レジン素材は小さな孔に汚れが溜まりやすく、長期間使用すると臭いが残りやすくなることがあります。

特に、洗浄が不十分な状態が続くと、デンチャープラークが定着しやすくなります。そのため、機械的清掃と洗浄剤の併用が欠かせません。

金属床入れ歯の特徴

金属床入れ歯は、表面が滑らかで汚れが付きにくい利点があります。レジン床に比べて臭いが出にくい傾向はありますが、清掃が不要という意味ではありません。

入れ歯の人工歯部分は樹脂でできているため、そこに汚れが残ることがあります。基本的な清掃方法はレジン床と同じです。

ノンメタルクラスプデンチャーの特徴

ノンメタルクラスプデンチャーは、金属のバネを使わず、弾性樹脂で固定します。弾性樹脂は表面に微細な傷が入りやすく、そこに汚れが残ることがあります。力を入れすぎた清掃は逆効果になることもあるため、やさしく丁寧に磨きましょう。

素材の違いはあっても、臭いの原因は「細菌が増殖しやすい環境」です。入れ歯の種類を理解したうえで、自分の入れ歯に合ったケアを続けることが、臭い予防につながります。

第4章 セルフケアで改善しないときは歯科医院へ

毎日きちんと洗っているのに臭いが残る場合、入れ歯そのものだけでなく、口腔内環境や見えない細菌の問題が関係していることがあります。これらはセルフケアでは対処に限界があるため、歯科医院で相談すると良いでしょう。

歯科医院で入れ歯クリーニング

歯科医院では、超音波洗浄器などを用いて入れ歯を清掃します。家庭のブラッシングでは落としきれないデンチャープラークや沈着物を除去できます。

日本義歯ケア学会の専門ガイドラインでも、日常清掃に加えて専門的管理を行う重要性が示されています。定期的なチェックは臭いの再発予防にもつながります。

参照:日本義歯ケア学会ガイドライン
 https://www.jdenturecare.com/_userdata/guideline/professional.pdf

粘膜の炎症やカンジダの確認

入れ歯の裏側の歯ぐきが赤くなっている場合、義歯性口内炎が起きていることがあります。カンジダ菌の増殖が関与することが多いとされています。

炎症があると、入れ歯を洗っても臭いが改善しにくいことがあります。歯科医院では粘膜の状態を確認し、必要に応じて薬剤での対応を行います。

歯周病など口腔全体の確認

入れ歯使用者でも、残存歯がある場合は歯周病の影響を受けます。歯周病は口臭の原因の一つで、治療しなければ悪臭も悪化します。

歯周病治療は基本治療が中心です。医院によっては補助的にブルーラジカルを使用することもありますが、症例に応じて選択されます。治療の選択肢や導入状況は医療機関で異なるため、気になる場合は歯科医院で説明を受けてから判断すると安心です。

出典:医療法人社団歯友会 ブルーラジカル
https://shiyuhkai.com/blueradical/

入れ歯の適合状態の見直し

入れ歯が合っていない場合、隙間に汚れが溜まりやすくなります。長期間使用している入れ歯では、だんだんお口と合わなくなることがあります。

定期検診では入れ歯のぐらつきや違和感など(適合状態)を確認し、必要に応じて調整を行います。調整することで入れ歯の隙間が埋まり、汚れが溜まりにくくなります。

参照:
厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の治療・予防」

https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-07-002.html

日本義歯ケア学会「義歯ケア専門ガイドライン」
https://www.jdenturecare.com/_userdata/guideline/professional.pdf

第5章 受診の目安とセルフチェックのポイント

入れ歯の臭いは、日々のケアで改善することが多いものです。ただし、セルフケアを続けても改善しない場合や、口腔内に違和感がある場合は、早めに歯科医院に相談しましょう。臭いは単に入れ歯が不衛生なだけでなく、炎症や感染のサインであることもあります。

受診を検討したいサイン

状 態 考えられる背景 歯科医院で行うこと
毎日洗っているのに臭いが続く デンチャープラークの蓄積、素材への吸着 歯科医院でクリーニング
歯ぐきが赤い・ヒリヒリする 義歯性口内炎、カンジダ増殖 粘膜の診査が必要
入れ歯の裏側がぬめる 細菌・真菌の増殖 洗浄方法の見直し+クリーニング
口臭が強くなったと家族に言われた 歯周病や残存歯の問題 口腔全体の検査
入れ歯がゆるくなった 適合不良、汚れの停滞 入れ歯の調整

※痛み、出血、強い赤みが続く、舌の白い苔が取れないなどがあるときは、早めに相談しましょう。

臭いだけに注目すると「洗い方が足りないのでは」と考えがちです。しかし、粘膜の炎症や歯周病が原因だとセルフケアだけでは改善しにくいことがあります。

入れ歯は歯科医院で定期的に確認してもらうと安心です。入れ歯は医療機器であり、長期間使う中で状態は変化します。入れ歯の臭いはその変化に気づくきっかけになることもあります。

強い消毒液や熱湯を使うなど、自己判断で極端な対処をするのは避けましょう。素材を傷め、かえって細菌が付着しやすくなることがあります。

臭いが気になったときは、「受診するほどではない」と我慢せず、一度確認してもらいましょう。入れ歯を快適に使い続けるためにも、歯科医院で定期検診を取り入れていきましょう。

まとめ

入れ歯の臭いは、細菌の増殖やデンチャープラークの蓄積が原因のことがあります。そのため日々の清掃や管理の積み重ねが大きく影響します。専用ブラシでの丁寧な清掃、洗浄剤の併用、夜間の取り外しといった基本を続けることが、臭い予防の基本です。

それでも改善しない場合は義歯性口内炎や歯周病など、口腔内全体の問題が原因の可能性があります。入れ歯は医療機器です。自己判断で対処を続けるよりも、歯科医院で状態を確認するほうが安心です。

臭いは「我慢するもの」ではありません。原因を整理し、適切に対応することで、改善が見込めることがあります。臭いが気になるときは、早めに歯科医院に相談しましょう。

 

作成日 2026年2月22日

参考文献

日本義歯ケア学会ガイドライン
https://www.jdenturecare.com/_userdata/guideline/professional.pdf

日本老年歯科学会 診療室における義歯洗浄と歯科衛生士による義歯管理指導の指針(案)
https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_2013.pdf

厚生労働省 口臭の治療・予防
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-07-002.html

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