子供の受け口は治るのか?矯正が必要なケースと判断の目安
2026.02.28
ファミリー⻭科
子どもの歯並びで、下の歯が前に出ていることに気づき、不安になったことはありませんか。「これって受け口?」と気になることがあるかもしれません。「このまま自然に治るのだろうか」「今すぐ矯正が必要なのだろうか」と考え始めてしまい、インターネットで情報を探しては、かえって不安が強くなることもあるかもしれません。
子どもの成長は一人ひとり異なります。歯の生え変わりやあごの発育の途中では、一時的にかみ合わせが反対に見えることもあります。しかし成長の経過を見守るだけではなく、早めに確認したほうがよい場合もあります。大切なのは、『すぐ治療か、様子を見るか』と自己判断することではなく、歯科医の診察で状態を確認することです。受け口のタイプや治療の必要性は、レントゲン検査やかみ合わせの評価を含めて歯科医が診断します。
この記事では、受け口(反対咬合)が自然に治ることはあるのか、どのような場合に矯正を考えるのか、その目安を整理していきます。まずは落ち着いて、子どものかみ合わせを確認していきましょう。
目次
監修した先生
奈良 倫之 先生
医療法人社団 歯友会 理事長
ファミリー歯科 院長
第1章 受け口は自然に治ることがあるのか
子どもの受け口に気づいたとき、まず気になるのは「成長とともに自然に治るのか」という点ではないでしょうか。すべてが自然に治るわけではありませんが、成長の過程で一時的に受け口のように見えるケースもあります。大切なのは、受け口のタイプを見分けることです。
一時的な「歯の傾き」
乳歯の時期や前歯が生え替わる時期には、歯の生える角度によって下の歯が前に出ているように見えることがあります。あごの骨格に問題がなく、前歯の位置関係だけが一時的に逆になっている場合は、永久歯への生え替わりや成長によって改善することもあります。
ただし、見た目だけで判断することは難しいため、気になるときは自己判断せず歯科医院に相談しましょう。歯科医院で定期検診を受けておくと、治療が必要な時期を判断しやすくなります。
あごの成長速度が不均一
上あごの成長が下あごに比べてゆっくりしている、下あごの成長が早いと、受け口が続くことがあります。骨格が関わるタイプの場合、自然に治る可能性は高くありません。成長とともに差がはっきりすることもあります。
あごの骨が原因なら、早期の矯正治療が選択肢になることがあります。すぐに治療を開始するとは限りませんが、経過観察の計画を立て、定期検診を続けましょう。
舌や口の癖
舌で前歯を押すクセや、口呼吸の習慣などで受け口になることがあります。クセが原因の場合は、生活習慣の見直しや簡単なトレーニングで改善が見込めることもあります。
受け口が自然に治るかどうかは、「歯の位置だけの問題か」「あごの骨格が関係しているか」「癖が影響しているか」などによって異なります。自己判断で様子を見るのではなく、まずは歯科医院に相談しましょう。定期的に歯科医がお子さんの状態を確認することで、受け口の改善につながります。
第2章 健診の基準から見る受け口の確認ポイント
受け口が気になったとき、「どの程度なら心配なのか」が分からず不安になる方は少なくありません。そこで参考になるのが、3歳児歯科健康診断で用いられている不正咬合の判定基準です。健診では、単に見た目だけでなく、かみ合わせの状態や歯の接触関係をもとに判断されています。
反対咬合(受け口)
歯科健診でまず確認されるのは、上の前歯よりも下の前歯が前に出ている状態、いわゆる前歯部反対咬合です。特に、複数の前歯が逆になっている場合や、かみ合わせたときに明らかに下あごが前方にずれる場合は、歯科医院での確認が勧められることがあります。一方で、反対咬合の度合いが軽度で、かみ合わせた瞬間だけ逆になるようなケースでは、成長の経過を見ながら判断することもあります。
家庭でも、以下の点を注視すると、ある程度は受け口の判断ができます。
- 正面から見たときに下の前歯が前に出ている
- かみ合わせたときに下あごを前にずらしている
- 横顔で見たときに下あごが大きく前に出て見える
- 発音や食事がしにくい
これらに複数当てはまる場合は、一度小児歯科や矯正歯科で相談しておくと安心です。早期に矯正を始めるかどうかは、骨格の状態や成長の見込みを総合的に判断します。必ずしも今すぐ治療が必要とは限らず、半年後に再検査ということもあります。
受け口は見た目だけで判断できません。健診は大まかに確認して「少しでも疑わしいケースは歯科医院の判断を促す」というものです。迷ったときは早めに、かかりつけ歯科であごや歯並びを確認してもらいましょう。
参照:日本小児歯科学会 3歳児歯科健康診断における不正咬合の判定基準
https://www.jspd.or.jp/recommendation/article02/
第3章 受け口を放置するとどうなるのか
受け口が続くと、かみ合わせやあごの成長に影響が出ることがあります。すべての子どもに起こるわけではありませんが、将来の変化を知っておくと判断しやすくなります。
歯や歯ぐきへの負担
受け口では前歯のかみ合わせが逆になります。その状態が続くと、特定の歯に力が集中します。上の前歯の裏側に強い力がかかり、下の前歯の先端が当たり続けることがあります。その結果、歯が欠けたり、すり減ったり、歯ぐきが下がることがあります。永久歯が生え始める時期はかむ力も強くなるため、定期的に歯科医院でかみ合わせを診てもらいましょう。
あごの成長バランスの変化
あごの骨格が原因の場合、成長とともに下あごが突き出ることがあります。幼少期は軽く見えても、思春期の成長で受け口がより悪化することがあります。受け口の治療は成長期の骨の発達に合わせて行いますが、その時期を過ぎると、治療の選択肢は限られます。
発音や食事への影響
受け口では前歯で食べ物をかみ切りにくくなります。「さ行」「た行」の発音が不明瞭になることもあります。ただし、発音の問題は受け口だけが原因とは限りません。気になる場合は歯科医院で確認し、必要に応じて言語聴覚士など他の専門機関と連携して治療を行います。
見た目への意識
年齢が上がると、歯並びを気にする子どもが増えます。本人が受け口に悩んでいる場合は、早めに歯科医院に相談しましょう。しかし必ず矯正を始める必要はありません。現状を把握するだけでも安心につながります。
受け口の経過は、成長の仕方で異なります。不安を抱え続ける必要はありませんが、確認を先延ばしにすることも避けたいところです。まずは現状を知り、成長に合わせて治療計画を見直していきましょう。
第4章 矯正を始めるタイミングと治療の考え方
受け口の相談で多いのが、「いつから矯正を始めるべきか」です。しかし治療の開始時期は一律ではなく、個人の状態に合わせて行います。早ければよいわけでも、永久歯がそろうまで待てばよいわけでもありません。
乳歯の時期は、あごの成長が活発です。骨格のバランスに課題がある場合は、成長を利用した対応を検討します。一方、歯の傾きによる一時的な受け口であれば、経過観察を選びます。
混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期)は、前歯のかみ合わせが明確になります。この段階で状態を評価し、必要に応じて矯正装置による治療を検討します。この時期は成長を活用して矯正できる貴重な時期です。
永久歯列期になると、あごの成長は落ち着きます。この時点で上下のあごの骨格差が大きい場合は大掛かりな治療が必要で、慎重な治療計画を立てます。
成長段階ごとの考え方
| 成長段階 | 主な特徴 | 対応 |
|---|---|---|
| 乳歯列期(3〜6歳頃) | あごの成長が活発。一時的な受け口も見られる | 軽度は経過観察。あごの骨が原因の場合は早期相談 |
| 混合歯列期(6〜12歳頃) | 前歯の永久歯が生え、かみ合わせが安定 | 必要に応じて装置治療を検討。成長を活用した治療ができる |
| 永久歯列期(12歳以降) | あごの成長が落ち着く | 本格矯正を検討。骨格差が大きい場合は慎重に計画 |
受け口の矯正は、歯の移動だけが目的ではありません。適切な時期に矯正を行うことで、あごの成長方向やかみ合わせのバランスを整えることが期待できます。治療負担を減らすためにも定期的な検診で適切な時期を見極めましょう。迷ったときは歯科医院とよく相談すると安心です。
第5章 受け口を治す主な治療法
受け口(反対咬合)の治療は、「歯を並べること」だけが目的ではありません。かみ合わせの機能回復と長期的な安定を重視しています。治療法は、原因が歯の位置か、あごの骨格か、あるいは両方かで変わります。
1.歯の位置が原因の場合
前歯の傾きや歯列の問題が主な原因であれば、矯正装置で歯の位置を整えます。
- 取り外し式装置
入れ歯のような着脱できる矯正器具を就寝時などに装着し、前歯のかみ合わせを誘導します。軽度のケースに適します。 - 部分的な固定装置(ブラケットなど)
必要な歯だけに装置を付け、歯の位置を細かく調整します。歯の移動をコントロールしやすい方法です。
骨格に大きな問題がない場合、早期に整えることでかみ合わせは安定しやすくなります。治療中は永久歯の萌出状況や歯根の状態を確認し、無理のない範囲で進めます。
2.上あごの発育不足がある場合
上あごの成長が不足しているタイプでは、子どもの成長期を利用します。
- 上あごの拡大装置
狭い上あごの幅を広げ、歯が並ぶスペースを確保します。かみ合わせの改善が期待できます。 - 前方成長を促す装置(フェイスマスクなど)
就寝時に特殊なフェイスマスクを着け、上あごを前方へ誘導します。下あごとの前後差を縮めて受け口の改善を図ります。成長が活発な時期に行うと、効果が期待しやすいとされています。
これらは「成長を利用する治療」です。適切な時期を逃すと効果は限定的になるため、状態に応じた時期に治療を検討することが大切です。時期を見計らうためにも定期的に歯科医院に通院しましょう。
3.下あごの成長が強い場合
下あごの前方成長が強いタイプでは、「上あごを前に出す」治療だけでは不十分なことがあります。成長の方向を整える装置を検討します。
- チンキャップ(下あご成長抑制装置)
顎外固定装置(チンキャップ)をあごの先に装着し、後方へ軽い力をかけます。下あごを押さえることで、下あごの過度な前方成長を緩やかにする治療です。成長期に使用しますが、効果には個人差があります。 - 機能的矯正装置
受け口の治療にはかみ合わせのバランス調整が有効なこともあります。上下のかみ合わせを矯正して、あごの位置を調整します。
筋肉のバランスと成長方向を整えることを目的とします。就寝時中心に使用する、取り外しができる矯正器具を使います。 - 成長観察と段階的治療
下あごの成長パターンは予測が難しいため、すぐに本格治療を始めない場合もあります。
定期的なレントゲン評価で成長速度を確認し、適切な時期に本格矯正へ移行します。
4.永久歯列期の本格矯正
永久歯がそろった後は、全体的な矯正治療を行います。歯科矯正で歯並びとあごの位置を総合的に整えます。装置はワイヤー矯正やマウスピース型矯正などがあります。
上下のあごの骨格差が大きい場合は、矯正治療と外科的治療を組み合わせる選択肢もあります。外科的治療は大規模な手術になるため、慎重な治療計画を立てる必要があります。
5.治療法の判断基準
受け口の治療は、全員が同じ方法で同じ時期に始めるものではありません。判断の軸は次の4点です。
- 原因は歯か、骨格か
- 子どもの成長段階
- かみ合わせや発音など機能への影響はあるか
- 将来どの程度の変化が予測されるか
受け口の治療は、歯の移動、成長の誘導、本格矯正など段階的に進みます。日本矯正歯科学会の指針では、診断に基づく個別計画を基本としています。早いほど良いとは限りませんが、確認を先延ばしにせず、一度は歯科医院に相談しておくと安心です。
迷ったときは歯科医院で、「受け口の原因は何か」「治療に最適な時期か」を確認しましょう。それが、無理のない治療選択につながります。
参照:日本矯正歯科学会 矯正歯科治療における標準治療の指針
https://www.jos.gr.jp/asset/public2022_0912.pdf
まとめ
子どもの受け口に気づくと、「このままで大丈夫だろうか」「矯正が必要なのだろうか」と不安になるのは自然なことです。前歯が生え替わる時期には、一時的に下の歯が前に出て見えることがあります。ただ、あごの大きさに差があるタイプの場合は、成長とともに受け口が目立ってくることがあります。
大切なのは、すぐに治療を始めるかどうかを決めることではありません。今のかみ合わせがどのタイプなのかを確認し、成長の様子を見ながら判断していくことです。健診や歯科での相談は、「治療を決める場」ではなく、「状態を知る場」と考えるとよいでしょう。
治療にせよ経過観察にせよ、受け口の対応は一人ひとり異なります。焦らず、定期的に歯科医院で確認しましょう。定期検診を続けることで、成長の変化に合わせた判断がしやすくなります。
作成日 2026年2月25日
参考文献
日本矯正歯科学会 矯正歯科治療における標準治療の指針
https://www.jos.gr.jp/asset/public2022_0912.pdf
日本小児歯科学会 3歳児歯科健康診断における不正咬合の判定基準
https://www.jspd.or.jp/recommendation/article02/
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