歯が痛い…でも歯医者に行けない場合の対処法は?
2026.02.28
ファミリー⻭科
突然の歯の痛みに襲われても、すぐに歯科医院を受診できるとは限りません。仕事が立て込んでいる、子どもの予定がある、夜間や休日でかかりつけの歯科医院が開いていない。そんな状況で「今すぐ歯医者に行けない」と焦る方は少なくありません。
しかし、歯の痛みは体からの大事なサインです。むし歯や歯の神経の炎症、歯ぐきの感染など、一刻を争うこともあります。市販の鎮痛薬で一時的に落ち着くことはあっても、原因そのものが自然に治ることは、ほぼありません。
大切なのは、無理に我慢することではなく、状況に応じた対処を冷静に選ぶことです。今すぐ受診できない場合でも痛みを和らげる方法や、救急受診を急ぐべき症状の見分け方を知っておくことで、不要な悪化を防ぐことができます。この記事では、歯医者に行けないときの現実的な対処法と、休日緊急外来の受診目安を解説します。
目次
監修した先生
奈良 倫之 先生
医療法人社団 歯友会 理事長
ファミリー歯科 院長
第1章 歯の痛みの原因
歯の痛みは「突然起きた」と感じるかもしれません。しかし多くの場合、口の中では長い時間をかけて病変が進んでいます。
むし歯が悪化した可能性
冷たい物や甘い物でしみる状態は、むし歯がエナメル質の内側まで進んでいるサインです。さらに進行して神経に近づくと、何もしなくてもズキズキと痛みが出ることがあります。この段階では、鎮痛薬で一時的に痛みが和らいでも、原因そのものが消えることはほとんどありません。
むし歯は細菌の働きによって歯が溶けていく病気です。早期であれば治療の負担は比較的軽く済みますが、神経まで炎症が及ぶと処置は複雑になります。何もしなくても歯痛が出ている場合は、むし歯が神経まで進行している可能性があります。
歯の神経の炎症
ドクンドクンと拍動するような強い痛みが続く場合、歯の内部にある神経(歯髄)が炎症を起こしていることがあります。夜間に痛みが強くなる、横になると響くといった特徴がみられることもあります。
神経の炎症は自然に回復することは稀で、早急に適切な歯科治療が必要です。痛み止めの使用は歯科医院に行くまでの応急処置に過ぎず、歯科受診が基本です。
歯ぐきの炎症や歯周病
歯の痛みではなく噛んだときに痛む、歯ぐきが腫れている、出血が続くといった症状は、歯周病や歯ぐきの炎症かもしれません。歯周病は慢性的に進行する病気ですが、疲労や体調不良などをきっかけに突然悪化し、急に痛みが強くなることもあります。
厚生労働省は、歯周病が成人に広くみられる疾患であり、早期の対応と継続管理が重要であると示しています。痛みが歯そのものではなく歯ぐき由来の場合もあるため、できるだけ早く歯科医院で確認することが大切です。
参照:厚生労働省 歯の健康
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b6.html
歯の痛みの原因は一つとは限りません。むし歯、神経の炎症、歯周病など、背景によって対処の優先度は変わります。応急処置で痛みを抑えている間に、できるだけ早く歯科医院を受診しましょう。
第2章 歯科医院に行けないときにできる応急処置
歯の痛みがあっても、すぐに受診できないことがあります。その場合は応急処置を行い、症状を悪化させないことが第一です。ここで紹介する方法はあくまで応急的な対応です。歯の痛みを根治することはできません。
市販の鎮痛薬は用法・用量を守る
痛みが強い場合は、市販の鎮痛薬を使用することがあります。歯痛に対してNSAIDsが有効であることは国内研究でも示されています。
しかし鎮痛剤は長期間服用するものではありません。歯痛に対する鎮痛薬の使用は応急的対応にとどめ、歯科受診を行うのが基本です。
鎮痛剤、特にNSAIDs(エヌセイズ:非ステロイド性抗炎症薬の総称)と呼ばれる鎮痛剤は副作用が多いため、服用回数や用量は守りましょう。痛みが強いからといって多量に服用すると、胃腸障害や肝機能障害などの副作用リスクが高まります。
特に注意が必要なのは、持病がある方や子ども、妊娠中の方です。リスクが高い方は比較的副作用が少ないアセトアミノフェンが第一選択肢になります。
- 胃潰瘍・胃炎の既往がある方は、NSAIDs(ロキソプロフェン、イブプロフェン、アスピリンなど)で胃痛や出血のリスクが高まります。
- 腎機能障害・心疾患がある方は、NSAIDsの使用で症状が悪化する可能性があります。
- 喘息のある方は、アスピリンや一部の鎮痛薬で発作が誘発される「アスピリン喘息」を起こすおそれがあります。
- 妊娠後期では、アスピリンやイブプロフェンなど一部NSAIDsは胎児循環に影響を及ぼす可能性があります。
- インフルエンザ罹患中は、一部の解熱鎮痛薬(NSAIDs)の服用でインフルエンザ脳症の発症リスクが指摘されています。服用前に医師・薬剤師に相談が必要です。
また、アスピリンには出血傾向を強める作用があります。抜歯後や歯ぐきから出血している場合は注意が必要です。
一般的に、妊娠中や持病のある方は自己判断せず、必ず事前に薬剤師や医師に相談しましょう。複数の鎮痛薬を重ねて服用することも避けます。
参照:日本ペインクリニック学会 NSAIDsとアセトアミノフェン
https://jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_keynsaids.html
参照:歯痛に対する非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の鎮痛効果
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsotp/32/1/32_16/_pdf/-char/ja
患部は外側から軽く冷やす
炎症による痛みが疑われる場合、頬の上からタオル越しに冷やすことで、腫れや熱感が和らぐことがあります。ただし、氷を直接当てる、長時間強く冷やすといった方法は逆効果になることがあります。
温めると血流が増え、痛みが強くなることがあるため、入浴や飲酒は控えます。夜間に痛みが増す場合は、横になったときに頭を少し高くすると楽になることがあります。
口の中を清潔に保つ
熱い物、冷たい物、甘い物、硬い物を食べると痛みを強めることがあります。食事は刺激の少ないやわらかいものを選びます。
痛みがあるからといって歯磨きを完全にやめると、細菌が増えて炎症が悪化することがあります。歯が痛くても口腔内は清潔に保ちましょう。強くこすらず、やさしく清掃を続けます。口腔内が不衛生だと炎症が悪化しやすいため、痛みがぶり返すことがあります。できる範囲で清潔を保ちましょう。
参照:厚生労働省 歯の健康
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b6.html
第3章 休日緊急外来で受診すべきケース
歯の痛みは、すべてが翌日まで様子を見てよいわけではありません。症状の強さによっては、休日や夜間でも医療処置が必要になることがあります。千葉県歯科医師会など、全国の歯科医師会では地域ごとの休日・夜間緊急歯科診療を案内しています。
参照:千葉県歯科医師会 休日に歯が痛くなったら
https://www.cda.or.jp/dentist/holiday
参照:東京都歯科医師会 休日歯科応急診療案内
https://www.tokyo-da.org/holiday
次のような症状がある場合は、ただちに休日緊急外来の受診を検討しましょう。
- 顔や頬が激しく腫れている
歯の感染が周囲の組織に広がっている可能性があります。腫れが急速に大きくなる、皮膚が熱を持っているといった場合は、早めの加療が必要です。 - 強い拍動痛が続き、鎮痛薬が効かない
市販薬を適切に服用しても痛みが治まらないときは、神経の強い炎症や膿の形成が疑われます。放置すると症状がさらに悪化することがあります。 - 発熱や強いだるさを伴う
歯の感染が全身に影響している可能性があります。38度前後の発熱や倦怠感がある場合は、単なる歯痛とは考えず受診を検討しましょう。 - 口が開きにくい、飲み込みづらい
顎の周囲や喉の近くまで炎症が広がると、口が開けにくい(開口障害)や飲み込みにくい(嚥下困難)症状が起きることがあります。呼吸に影響が出る場合は、速やかな医療対応が必要です。 - 外傷による歯のカケ、折れや脱落がある
転倒や事故で歯が折れたり、抜けたりした場合は時間との勝負になります。早急に治療をすれば抜けた歯が定着できる可能性が上がります。ただちに歯科医院を受診しましょう。 - 出血が止まらない
歯ぐきや口腔内からの出血が止まらない場合は、症状が悪化している可能性があります。自己判断せず、医療機関に相談します。
休日緊急外来は、あくまで応急処置だけ行います。応急処置後はできるだけ早くかかりつけ歯科医院を受診し、原因治療と継続管理を受けます。痛みが強いときほど、無理に我慢せず、休日外来も活用していきましょう。
第4章 我慢してはいけない痛みは?
前章では休日緊急外来の受診が必要となる急性症状を挙げました。この章では、その一歩手前の段階も含めて「できるだけ早く受診を検討したい痛み」を解説します。
48時間以上、痛みが続いている
市販の鎮痛薬で一時的に落ち着いても、2日以上痛みが続く場合は放置せず、歯科医院を受診しましょう。むし歯が神経に近づいている、あるいは歯ぐきの炎症が進んでいる可能性があります。痛みが弱くなっても、原因が消えたとは限りません。
夜間に痛みが強くなる
横になるとズキズキと響く、夜中に目が覚めるほど痛むといった症状は、歯の神経の炎症が強まっている可能性があります。睡眠が妨げられる状態が続くと、全身の疲労も重なります。鎮痛薬で痛みを抑えて、数日以内に受診を検討しましょう。
腫れが広がっている
最初は歯ぐきの一部だけだった腫れが、頬やあごまで広がっている場合は注意が必要です。強い発熱がなくても、細菌感染が進行している可能性があります。触れると強く痛む、皮膚が張っている感じがある場合は、休日緊急外来も含めて受診しましょう。
噛めない、力をかけられない場合
噛んだときに鋭い痛みが走る、歯が浮いたように感じる場合は、歯の根の周囲に炎症が起きていることがあります。無理に反対側だけで噛み続けると、かみ合わせのバランスが崩れることもあります。生活に支障が出ている場合は、我慢せず早めに受診しましょう。
基礎疾患がある方・妊娠中の方
糖尿病などの基礎疾患がある方は、感染が急速に進むことがあります。妊娠中は口腔トラブルが増え、健康な方でも炎症が強く出ることもあります。軽い痛みであっても、自己判断で長期間様子を見ることは避けましょう。
歯の痛みは身体からの警報です。「まだ我慢できる」と感じる痛みでも、症状の持続や広がりがあれば受診のタイミングです。応急処置で時間を稼ぎながら、できるだけ早く治療を受けましょう。
第5章 歯の痛みを繰り返さないために
応急処置で痛みが落ち着いても、原因そのものが消えたわけではありません。痛みを抑えている間に、きちんと治療を受けることが前提になります。ここでは、同じ状況を繰り返さないための視点を整理します。
痛みが引いても受診を後回しにしない
鎮痛薬で楽になると、「もう少し様子を見よう」と考えがちです。しかし、神経の炎症や歯の根の感染は自然に治ることはまずありません。痛みが弱くなった時期こそ、受診のタイミングです。強い痛みが出てからでは、治療の負担が大きくなることがあります。
歯科医院で定期検診を
むし歯や歯周病は、初期の段階では自覚症状が少ない病気です。痛みが出る前にむし歯や歯周病を見つけることができれば、処置は比較的軽く済みます。症状がなくても定期的に口の中の状態を確認してもらうと、通院回数を減らすことにもつながります。
緊急時の備えを
休日や夜間に痛みが出た場合に備え、地域の休日緊急歯科診療の情報をあらかじめ登録しておくと安心です。あらかじめ自治体のHPや歯科医師会などの情報サイトを確認し、ブックマークを付けておきましょう。連絡先や受付時間を把握しておけば、慌てずに行動できます。
歯の痛みは我慢するものではありません。症状が軽いうちに対応することが、結果的に負担を抑えます。無理をせず、必要なときは早めに歯科医院に相談しましょう。
まとめ
突然の歯の痛みに襲われたら、すぐに歯科医院へ行くのが最善の対処法です。しかし仕事や予定、休日などで動けないこともあります。その場合は鎮痛薬を正しく使い、刺激を避けながら一時的に様子を見ることになります。ただし、痛みが落ち着いても「治った」とは限りません。
腫れが広がる、熱が出る、強い痛みが続くといった場合は、休日緊急外来を利用するという選択肢もあります。無理に我慢し続ける必要はありません。しかし休日緊急外来も応急処置しかできません。応急処置でしのいだあとは、できるだけ早く歯科医院で原因を確認してもらいましょう。
作成日 2026年2月25日
参考文献
日本ペインクリニック学会 NSAIDsとアセトアミノフェン
https://jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_keynsaids.html
歯痛に対する非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の鎮痛効果
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsotp/32/1/32_16/_pdf/-char/ja
千葉県歯科医師会 休日に歯が痛くなったら
https://www.cda.or.jp/dentist/holiday
担当した診療所
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