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歯周病の再生治療(GTR法・エムドゲイン)とは?費用と適応条件を解説

2026.03.25

ファミリー⻭科

歯周病の再生治療(GTR法・エムドゲイン)とは?費用と適応条件を解説

歯ぐきの出血や腫れが続くと、「歯周病かもしれない」と不安に感じる方もいるかもしれません。歯周病は歯ぐきの炎症だけでなく、歯を支える骨(歯槽骨)を少しずつ破壊していく病気です。初期の段階では強い痛みが出にくいため、気づかないうちに進行してしまうこともあります。歯周病が進むと、歯ぐきの腫れや出血、口臭、歯のぐらつきなどの症状が現れ、骨の吸収が進むと歯を支える力が弱くなり、最終的には抜歯が必要になることもあります。しかし、歯周組織の回復を目指す治療法もあります。

歯周病の再生治療とは、歯周病によって失われた骨や歯周組織の回復を目指す歯周外科治療です。代表的な方法にはGTR法(組織誘導再生法)エムドゲインがあります。骨の欠損の形によって適応が決まり、特に垂直性骨欠損のように骨の壁が残っている場合に検討されることがあります。

通常の歯周病治療では、歯石や細菌を取り除いて炎症を抑え、病気の進行を止めることを目指します。しかし、歯周病によって失われた骨や歯周組織が自然に元の状態へ戻ることはほとんどありません。そのため、骨の欠損が生じた場合には、歯周組織の回復を目指す再生治療が検討されることがあります。

この記事では、歯周病の再生治療について、GTR法とエムドゲインの仕組みや違い、適応条件、費用の目安を解説します。

 

監修した先生

奈良 倫之先生

奈良 倫之 先生

医療法人社団 歯友会 理事長
ファミリー歯科 院長

第1章 歯周病の再生治療とは

歯周病は、歯ぐきの炎症だけでなく、歯を支える骨や組織を少しずつ破壊していく病気です。進行すると歯ぐきの腫れや出血だけでなく、歯のぐらつきや噛みにくさが起こることがあります。これは、歯を支えている骨(歯槽骨)や歯周組織が減ってしまうためです。

一般的な歯周病治療では、歯石や細菌を取り除き、炎症を抑えることを目的に治療を行います。しかし、歯周病によって失われた骨や歯周組織は、自然に元の状態へ戻ることはほとんどありません。そこで検討されることがあるのが、歯周組織の回復を目指す歯周組織再生療法です。

歯周組織とは

歯を支えている組織は、まとめて「歯周組織」と呼ばれます。主な構成は次の4つです。

  • 歯ぐき(歯肉)
  • 歯を支える骨(歯槽骨)
  • 歯と骨をつなぐ歯根膜
  • 歯の根を覆うセメント質

歯周病が進むと、これらの組織が破壊されていきます。特に歯槽骨が失われると、歯の安定性が低下し、歯のぐらつきにつながります。

歯周再生治療の目的

歯周再生治療は、歯周病によって失われた歯周組織の再生を促す治療です。歯ぐきを開いて感染した組織や歯石を取り除き、骨や歯根膜が再生しやすい環境を整えます。

代表的な再生療法として知られているのが以下の2つです。

  • GTR法(組織誘導再生法)
  • エムドゲイン(EMD)

どちらも歯周外科の治療法ですが、再生を促す仕組みが異なります。

すべての歯周病に適応するわけではない

歯周再生治療は、すべての歯周病に行えるわけではありません。骨の失われ方や歯の状態によって適応が判断されます。例えば、骨の吸収が平らに広がる「水平性骨吸収」の場合は再生が難しいことが多く、適応外になることがあります。

一方で、骨の一部が深く失われる「垂直性骨欠損」の場合は、再生治療が検討されることがあります。骨の形や歯周ポケットの状態を詳しく確認したうえで、治療方法が選択されます。

参照:日本歯周病学会 歯周治療のガイドライン2022
 https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_2022.pdf

第2章 歯周病の骨の減り方と再生治療ができるケース

歯周再生治療は、歯周病で失われた骨や歯周組織の回復を目指す治療ですが、すべての歯周病に行えるわけではありません。再生治療が検討されるかどうかは、主に骨の失われ方(骨欠損の形)によって判断されます。

歯周病による骨吸収には、大きく分けて「水平性骨吸収」と「垂直性骨欠損」があります。水平性骨吸収は骨が全体的に平らに減っていくタイプで、再生するためのスペースを確保しにくいことが多いです。一方、垂直性骨欠損は歯の周囲に深いくぼみができる欠損で、再生治療の適応になることがあります。

骨欠損の壁の数

垂直性骨欠損は、骨の残り方によって「壁の数」で分類されます。(「壁」とは、歯の周囲に残っている骨の面のことです)骨の壁が多いほど再生スペースが保たれやすく、再生治療の成功率も高くなると考えられています。

骨欠損の種類 特徴 再生治療の適応
3壁欠損 骨の壁が3方向残っている 適応になりやすい
2壁欠損 骨の壁が2方向残っている 条件により適応
1壁欠損 骨の壁が1方向のみ残る 適応が難しいことが多い
水平性骨吸収 骨が平らに減少する 再生治療は難しい

3壁欠損は骨に囲まれた「容器」のような形になるため、再生するスペースが保たれやすい特徴があります。そのため、GTR法やエムドゲインなどの再生療法が比較的効果があるとされています。

骨欠損の形が重要な理由

再生治療では、骨が再生するための空間が必要です。骨の壁が少ない場合は、そのスペースが維持できず、歯ぐきの組織が入り込んでしまうことがあります。その結果、骨の再生が起こりにくくなることがあります。

このため歯周再生治療では、レントゲン検査や歯周検査を行い、骨欠損の形や深さを確認したうえで治療方法が検討されます。骨の形や歯の状態、口腔内の清掃状態などを総合的に判断して、再生治療の適応が決められます。

参照:日本歯周病学会 歯周病患者における再生療法のガイドライン2023
 https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_regenerative_medicine_2023.pdf

第3章 歯周組織再生医療「GTR法」と「エムドゲイン」とは

歯周病によって骨や歯周組織が失われた場合、通常の歯周治療だけでは元の状態に戻ることはほとんどありません。そのため、歯周外科の一つとして歯周組織再生療法が行われることがあります。再生療法にはいくつかの方法がありますが、代表的な治療として知られているのがGTRエムドゲインです。どちらも歯周病で破壊された歯周組織の回復を目指す治療ですが、再生を促す仕組みや使用する材料が異なります。

GTR法(組織誘導再生法)

GTR法は「Guided Tissue Regeneration」の略で、日本語では組織誘導再生法と呼ばれます。歯周病で骨が失われた部位に人工膜(メンブレン)を設置し、骨や歯根膜の再生を促す治療です。

歯周病で骨が失われた場所では、歯ぐきの組織が先に入り込みやすくなります。歯ぐきの組織が入り込むと、骨や歯根膜が再生するスペースが確保できず、十分な回復が起こりにくくなります。GTR法では人工膜を設置することで、歯ぐきの侵入を防ぎ、再生のための空間を維持します。

治療では次のような流れで処置が行われます。

  • 歯ぐきを切開し、歯石や感染した組織を除去する
  • 骨欠損部に人工膜(メンブレン)を設置する
  • 歯ぐきを縫合して再生を待つ

膜は一定期間、骨や歯根膜が再生するためのスペースを保つ役割を持ちます。使用する膜には体内で吸収されるタイプと、後日取り除くタイプがあります。取り除くタイプの膜は歯周組織が回復してから、再び切開して取り除きます。

GTR法は、次のようなケースで検討されることがあります。

  • 垂直性骨欠損
  • 根分岐部病変(奥歯の分かれ目の骨吸収)
  • 骨の壁が比較的残っている欠損

これらの条件では、歯周組織の再生が期待できることがあります。

エムドゲイン(EMD)

エムドゲインは、歯の発生過程に関わるタンパク質を利用した再生材料です。正式にはエナメルマトリックスデリバティブ(Enamel Matrix Derivative)と呼ばれます。歯の根の表面に塗布することで、歯周組織の再生を促すとされています。

歯が発生する過程では、歯の周囲に特定のタンパク質が働き、歯根膜やセメント質、歯槽骨の形成を助けることが知られています。エムドゲインは、このタンパク質をもとに作られた薬剤で、歯周組織の再生環境を整える働きがあると考えられています。

治療の基本的な流れは次のとおりです。

  • 歯ぐきを切開して歯石や感染組織を除去する
  • 歯の根の表面をきれいに処理する
  • エムドゲインのゲルを塗布する

エムドゲインは膜を使用しないため、GTR法と比べて治療が比較的シンプルになることがあります。主に次のようなケースで用いられることがあります。

  • 垂直性骨欠損
  • 限局した骨欠損
  • 骨の壁が比較的残っている

GTR法とエムドゲインはいずれも歯周組織の再生を目指す治療ですが、治療の原理が異なります。
GTR法は歯ぐきの中に膜を張り再生スペースを確保する方法で、エムドゲインは再生を促すタンパク質を歯ぐきに注入して歯周組織の再生を促す方法です。歯周病の進行状況や骨欠損の形、歯の状態などを考慮し、歯科医師が適切な治療法を選択します。

歯周再生治療の効果

歯周再生療法では、歯周ポケットの深さの改善歯周組織の回復が報告されています。日本歯周病学会のガイドラインでも、垂直性骨欠損などの条件では歯周ポケットの改善や歯槽骨の回復が期待できる治療として紹介されています。ただし骨欠損の形や口腔内の清掃状態などによって結果は異なります。

参照:日本歯周病学会 歯周病患者における再生療法のガイドライン2023
https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_regenerative_medicine_2023.pdf

第4章 GTR法とエムドゲインの違いと併用

GTR法とエムドゲインはどちらも歯周組織の再生を目指す治療ですが、再生を促す仕組みや使用する材料が異なります。そのため、歯周病の状態や骨欠損の形によって適した治療方法が選ばれます。

大きな違いは、組織再生を促すアプローチです。GTR法は人工膜を使い、骨や歯根膜が再生するためのスペースを確保する治療です。一方、エムドゲインは歯の発生過程に関わるタンパク質を利用し、歯周組織の再生環境を整える治療です。

GTR法とエムドゲインの違い

項目 GTR法 エムドゲイン
治療の考え方 膜で再生スペースを確保する 再生を促すタンパク質を利用する
使用する材料 メンブレン(人工膜) エナメルマトリックスデリバティブ
主な適応 根分岐部(奥歯の歯根が分岐した場所)の病変など 垂直性骨欠損
手術の特徴 膜を設置する外科処置 薬剤を塗布する
治療の目的 骨や歯根膜の再生スペースを維持 歯周組織の再生を誘導

GTR法は、骨の欠損が大きい場合や、奥歯の根分岐部のように再生スペースを維持する必要があるケースで検討されることがあります。一方、エムドゲインは比較的限局した骨欠損や垂直性骨欠損などで使用されることがあります。

2つの治療法を併用することも

臨床では、GTR法とエムドゲインが単独で使われるだけでなく、他の材料と併用されることもあります。例えば次のような組み合わせが行われることがあります。

  • エムドゲイン+骨補填材
  • GTR法+骨補填材
  • GTR法+エムドゲイン

骨補填材は骨の欠損部分を補う材料で、再生の足場として使われます。これらを組み合わせることで、骨の再生環境をより整えることを目的とします。

補助的な治療としてのブルーラジカル

歯周病治療では、近年ブルーラジカルと呼ばれる光を利用した治療が補助的に用いられることがあります。これは光と薬剤の反応によって細菌を減らす方法です。歯周ポケット内の細菌を減らすことで、歯周病の炎症を抑えることを目的としています。

ただし、ブルーラジカルは歯周組織の再生を直接起こす治療ではありません。再生療法の中心となるのは、あくまでGTR法やエムドゲインなどの歯周外科治療です。ブルーラジカルはそれらの治療を補助する方法の一つとして位置づけられています。

出典:医療社団法人歯友会 ブルーラジカル

第5章 歯周病再生治療のFAQ(よくある質問)

歯周病の再生治療については、治療方法だけでなく費用や適応条件など、気になる点が多い方もいるかもしれません。ここでは歯周再生治療についてよくある質問をQ&A形式でまとめます。

Q.歯周病の再生治療は誰でも受けられますか

A.すべての歯周病に適応するわけではありません。再生治療は、骨の欠損の形や歯の状態によって適応が判断されます。特に垂直性骨欠損や3壁欠損のように、骨の壁が比較的残っているケースでは再生が期待できることがあります。一方、骨が平らに減少する水平性骨吸収では、再生が難しいことが多いです。

Q.歯周再生治療の費用はどれくらいですか

A.再生治療は自由診療になることが多く、歯科医院によって費用は異なります。一般的な目安は次のとおりです。

治療方法 費用の目安
エムドゲイン 10万円程度(1歯)
GTR法 10〜15万円程度(1歯)
骨補填材併用 10〜20万円程度(1歯)

使用する材料や骨欠損の大きさ、治療の難易度によって費用は変わることがあります。

Q.再生治療を受ければ歯周病は完全に治りますか

A.再生治療は歯周組織の回復を目指す治療ですが、歯周病は慢性疾患のため治療後のメンテナンスが重要です。歯周病菌が再び増えると、炎症が再発することがあります。治療後も定期的な歯科検診やクリーニングを受けることが勧められます。

Q.歯周病の再生治療はどのような場合に歯科医院へ相談するとよいですか

A.歯ぐきの出血や腫れが続く場合や、歯周ポケットが深いと指摘された場合は、歯周病が進行している可能性があります。歯周病が進むと歯を支える骨が減少することがあります。このようなケースでは、歯周組織再生療法が検討されることがあります。
 また、歯のぐらつきや歯ぐきの下がりが気になる場合も、歯周組織の状態を確認しておくと安心です。歯周病は早い段階で状態を把握することで、治療の選択肢が広がることがあります。気になる症状がある場合は、歯科医院で歯周検査やレントゲン検査を受け、現在の状態を確認してみるとよいでしょう。

まとめ

歯周病は歯ぐきの炎症だけでなく、歯を支える骨(歯槽骨)や歯周組織を少しずつ破壊していく病気です。一般的な歯周病治療では、歯石や細菌を取り除いて炎症を抑え、病気の進行を止めることを目的にします。しかし、歯周病によって失われた骨や歯周組織が自然に元の状態へ戻ることはほとんどありません。

そのため、歯周病が進行して骨の欠損が生じた場合には、歯周組織の回復を目指す歯周再生治療が検討されることがあります。代表的な治療法として、人工膜を使って再生スペースを確保するGTRと、歯の発生に関わるタンパク質を利用するエムドゲインがあります。どちらも歯周組織の再生を促す治療ですが、骨欠損の形や歯の状態によって適した方法が選択されます。

ただし、再生治療はすべての歯周病に適応できるわけではありません。骨の減り方や歯の動揺、口腔内の清掃状態などを総合的に判断して治療方法が決まります。また、再生治療を受けたあとも歯周病の再発を防ぐためには、日常のセルフケアと歯科医院での定期的なメンテナンスが重要です。

歯周病は進行するほど治療が難しくなることがあります。歯ぐきの出血や歯のぐらつきが気になる場合は、早めに歯科医院で状態を確認していくと安心です。

記事作成日 2026年3月21日

 

参考文献

日本歯周病学会 歯周病患者における再生療法のガイドライン2023
https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_regenerative_medicine_2023.pdf

日本歯周病学会 歯周治療のガイドライン2022
https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_2022.pdf

Enamel matrix derivative for periodontal regeneration
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6786880/

担当した診療所

ファミリー歯科

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