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介護中の口腔ケア、どうすればいい?家族介護者のための歯のお手入れ完全ガイド

2026.03.24

ファミリー⻭科

介護中の口腔ケア、どうすればいい?家族介護者のための歯のお手入れ完全ガイド

介護が始まると、食事や入浴、服薬などさまざまなケアが必要になります。その中で見落とされやすいのが「口腔ケア」です。歯みがきや入れ歯の手入れは日常的なことのように感じますが、高齢者にとって口の中を清潔に保つことは、全身の健康と深く関係しています。

厚生労働省の介護予防マニュアルでは、口腔ケアは「食事機能の維持」「誤嚥性肺炎の予防」「生活の質の維持」に関わる重要な取り組みとして位置づけられています。年齢を重ねると、唾液が減る、舌の動きが弱くなる、飲み込みが遅くなるなど、口の機能が少しずつ低下していきます。こうした変化が重なると、口の中に細菌が増えやすくなり、体調にも影響することがあります。

しかし実際の介護では、「歯みがきはどこまで手伝えばいいのか」「入れ歯の手入れはどうするのか」「嫌がるときはどうすればいいのか」と悩む家族も少なくありません。自己流のケアでは不十分なこともあり、口の中のトラブルに気づくのが遅れることもあります。

介護中の口腔ケアの基本は、次の3つです。

  • 歯や舌の汚れを毎日取り除く
  • 入れ歯を外して清掃する
  • 口の乾燥を防ぐ

これらを続けることで、誤嚥性肺炎や口臭、食事量の低下などの予防につながると考えられています。

この記事では、介護中の口腔ケアの基本と、自宅で続けやすい具体的な方法を解説します。あわせて、歯科医院に相談したほうがよいタイミングも紹介します。

 

監修した先生

奈良 倫之先生

奈良 倫之 先生

医療法人社団 歯友会 理事長
ファミリー歯科 院長

第1章 介護では口腔ケアが重要

高齢者の介護では、食事や服薬、入浴などのケアが優先されることが多く、口腔ケアは後回しになりがちです。しかし、口の中の健康は全身の状態と密接に関係しています。厚生労働省の介護予防マニュアルでは、口腔機能を保つことが介護予防の重要な取り組みの一つとされています。

加齢によって口の機能は少しずつ変化する

年齢を重ねると、歯の本数が減る、唾液の分泌量が少なくなる、舌や頬の筋肉が弱くなるなど、口の中の環境は少しずつ変化します。こうした変化が進むと、食べ物をうまく噛めなくなったり、飲み込みにくくなったりすることがあります。口の機能が低下すると食事量が減り、栄養状態にも影響することがあります。

誤嚥性肺炎の予防にも関係する

口の中に細菌が増えると、誤嚥性肺炎のリスクにも関係します。誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液と一緒に口の中の細菌が気管に入ることで起こると考えられています。高齢者の肺炎の多くがこのタイプとされており、口腔ケアによって口の中の細菌を減らすことが予防につながるといわれています。

生活の質にも影響する

さらに、口の状態は日常生活の快適さにも影響します。口の乾燥や口臭、入れ歯の不具合があると、食事や会話を楽しみにくくなることがあります。口の中を清潔に保つことは、食事やコミュニケーションを続けるための環境を整えることにもつながります。

口腔ケアは健康を支える日常ケア

介護中の口腔ケアは、単に歯をきれいにするだけのものではありません。食べる力を支え、体調の維持に関わる大切なケアです。家族が毎日のケアを行うことで、口の変化に気づきやすくなり、トラブルの早期発見にもつながります。

介護口腔ケアの主な目的

目的 内容
誤嚥性肺炎の予防 口腔内の細菌を減らし、誤嚥による感染のリスクを下げる
食事機能の維持 噛む力や飲み込む力を保ち、食事を続けやすくする
栄養状態の維持 食事量の低下を防ぎ、低栄養を予防する
口臭・口腔トラブルの予防 細菌の増殖を抑え、口臭や炎症を防ぐ
生活の質の維持 会話や食事を快適に行える状態を保つ

口腔ケアは、こうした複数の役割を持つケアです。毎日の歯みがきや入れ歯の清掃を続けることが、結果として健康維持につながります。介護の中で無理なく続けられる方法を取り入れ、口の中の状態を定期的に確認していくことが大切です。

参照:厚生労働省 口腔機能向上マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1f.pdf

第2章 介護中の口腔ケアの基本

介護の現場では、口腔ケアは「歯みがき」だけを意味するものではありません。歯や歯ぐきの清掃だけでなく、舌や口の粘膜の清掃、入れ歯の管理、口の乾燥への対応など、口の中全体を整えるケアを指します。

高齢になると唾液の分泌が減り、口の中が乾きやすくなります。さらに、噛む力や舌の動きも弱くなるため、食べかすが口の中に残りやすくなります。これらの状態が続くと細菌が増えやすくなり、口臭や炎症の原因になることがあります。

そのため、口腔ケアは「汚れを取り除くこと」と「口の機能を保つこと」の両方を意識して行うことが大切です。家庭で行う場合も、いくつかの基本的なポイントを押さえることで、無理なくケアを続けやすくなります。

家庭でできる介護口腔ケアの基本手順

手順 ケア内容
1 体を起こす(誤嚥を防ぐ姿勢)
2 入れ歯を外す
3 歯ブラシで歯を磨く
4 舌や口の粘膜を清掃する
5 口をすすぐ
6 口の乾燥を確認する

介護中の口腔ケアでは、まず上体を起こして誤嚥しにくい姿勢を整えます。次に入れ歯を外し、歯・舌・粘膜の順にやさしく清掃します。最後に口をすすぎ、乾燥が強い場合は保湿ケアを行います。

歯みがきは短時間でも毎日続ける

歯の表面には細菌のかたまり(歯垢)が付着しやすく、時間が経つと歯ぐきの炎症やむし歯の原因になります。歯ブラシで軽い力で磨くことを習慣にします。自分で磨くことが難しい場合は、家族が仕上げ磨きを行います。

舌や口の粘膜も清潔にする

口の中の細菌は歯だけでなく、舌の表面や頬の粘膜にも付着します。舌の汚れが増えると口臭の原因になることがあります。舌ブラシやガーゼなどで、やさしく汚れを拭き取ります。

入れ歯は外して清掃する

入れ歯には食べかすや細菌が付着しやすいため、外して専用ブラシなどで清掃します。入れ歯を装着したまま歯みがきをしても、十分に汚れを落とすことはできません。就寝前には外して洗う習慣をつけると、口の中の清潔を保ちやすくなります。

口の乾燥に気づくことも大切

高齢者では、薬の影響や加齢によって口が乾きやすくなることがあります。口の乾燥は細菌が増える原因になるため、水分摂取や口腔ケアで口の中を湿らせることが大切です。

介護口腔ケアでよく使われる道具

道具 用途
歯ブラシ 歯の清掃
スポンジブラシ 口腔粘膜の清掃
舌ブラシ 舌の汚れの除去
口腔保湿ジェル 口の乾燥対策
入れ歯ブラシ 入れ歯の清掃

口腔ケアは、毎日続けることが大切です。ただし、無理に長時間行う必要はありません。体調の良い時間帯に短時間でもケアを行うことで、口の中の清潔を保ちやすくなります。

また、口の中の状態は日々変化します。歯ぐきの腫れや出血、入れ歯の痛みなどが見られる場合は、歯科医院で確認すると安心です。家庭でのケアと歯科医療のサポートを組み合わせながら、口の健康を維持していくことが大切です。

参照:日本歯科衛生士会 介護保険施設における口腔ケア推進マニュアル
https://www.jdha.or.jp/pdf/outline/suishinmanual.pdf

第3章 家族介護でよくある口腔ケアの悩み

介護中の口腔ケアは、方法が分かっていても実際にはうまくいかないことがあります。高齢者は体調や気分の変化が大きく、口を開けてもらえない、歯みがきを嫌がるなど、家族が対応に困る場面も少なくありません。

また、口の状態は外から見えにくいため、変化に気づくのが遅れることがあります。歯ぐきの腫れや口の乾燥、入れ歯の不具合などがあっても、本人がうまく伝えられない場合もあります。その結果、食事量の低下や口臭など、生活の中で気づくサインから問題が見つかることもあります。

歯みがきを嫌がる場合

認知症がある場合や体調がすぐれない場合、口腔ケアを拒否することがあります。無理に続けると、さらに嫌がるようになることがあります。体調の良い時間帯を選ぶ、短時間で行うなど、無理のない方法を考えることが大切です。

口の乾燥が強くなる場合

高齢者では唾液の分泌が減り、口の中が乾きやすくなることがあります。薬の影響や水分摂取の不足が関係することもあります。口が乾くと細菌が増えやすくなり、口臭や炎症の原因になることがあります。

入れ歯のトラブル

入れ歯は長く使用していると、口の形の変化によって合わなくなることがあります。痛みや違和感があると食事を避けるようになり、栄養状態に影響することがあります。入れ歯が合っていない場合は、歯科医院で調整が必要です。

食事量の変化

食事量が急に減った場合、噛む力や飲み込む力の低下、口の痛みなどが関係していることがあります。口の中のトラブルが背景にある場合もあるため、食事の様子を観察することが大切です。

介護中の口腔ケアで見られるトラブルと考えられる原因

トラブルの内容 考えられる原因
歯みがきを嫌がる 体調不良、認知症、口の痛み
口臭が強くなる 口腔内細菌の増加、口の乾燥
入れ歯を使わなくなる 入れ歯の不適合、痛み
食事量が減る 噛む力の低下、口腔トラブル
むせやすくなる 飲み込み機能の低下

こうした変化が続く場合は、口の中にトラブルが起きている可能性があります。家庭でのケアだけで改善しない場合は、歯科医院で口の状態を確認すると安心です。

歯科医院では、口腔ケアの方法の指導や入れ歯の調整などを行っています。訪問歯科診療に対応している医院もあり、通院が難しい場合でも相談できることがあります。口の状態を定期的に確認しながら、無理のないケアを続けていくことが大切です。

第4章 歯科医院に相談したほうがよいケース

介護中の口腔ケアは、家庭でできる範囲のケアを続けることが基本です。しかし、口の中の状態は年齢や体調によって変化しやすく、家族のケアだけでは対応が難しいこともあります。

歯ぐきの腫れや口臭、入れ歯の不具合などは、口の中のトラブルのサインであることがあります。こうした変化に気づいたときに歯科医院へ相談すると、症状が大きくなる前に対応しやすくなります。

入れ歯が合わなくなる

入れ歯は長く使用していると、歯ぐきや顎の形の変化によって合わなくなることがあります。入れ歯がゆるくなる、食事中に外れやすくなる、痛みが出るなどの症状がある場合は、調整が必要になることがあります。

入れ歯が合わない状態が続くと、食事を避けるようになったり、噛む力が弱くなったりすることがあります。食事量の低下につながることもあるため、違和感がある場合は早めに確認することが大切です。

歯ぐきの腫れや出血が続く

歯ぐきの腫れや出血は、歯周病が進んでいるサインであることがあります。歯周病は高齢者にも多く見られる病気で、口臭や歯のぐらつきの原因になることがあります。

歯科医院では、歯石の除去や口腔ケアの指導などを行い、口の状態を整えることができます。症状が軽いうちに対応すると、口の中の環境を改善しやすくなります。

口臭が強くなる

口臭が強くなる原因としては、口の乾燥、歯周病、入れ歯の汚れなどが考えられます。口腔ケアを続けていても改善しない場合は、口の中に炎症や感染が起きている可能性があります。

口臭は本人が気づきにくいことも多く、家族が最初に変化に気づくことがあります。歯科医院で口の状態を確認することで、原因を見つけやすくなります。

食事のときにむせやすくなった

食事中にむせることが増えてきた場合、飲み込む力が弱くなっている可能性があります。口の機能の低下は、食事の安全にも関係します。

歯科医院では、口の機能の確認や口腔ケアの方法の説明などを受けることができます。必要に応じて、訪問歯科診療を利用できる場合もあります。

家族だけでケアが難しい

介護を続けていると、「この方法で合っているのだろうか」「口の状態をどう確認すればよいのだろうか」と迷うこともあります。歯科医院では、家族が行う口腔ケアの方法について相談することもできます。

歯ブラシの選び方や入れ歯の手入れ方法など、日常ケアのポイントを知ることで、家庭でのケアが続けやすくなります。介護中の口腔ケアは、家族だけで抱え込む必要はありません。歯科医療のサポートを取り入れながら、無理のない方法で続けましょう。

訪問歯科診療という選択肢

通院が難しい場合は、歯科医師や歯科衛生士が自宅や介護施設を訪問して診療を行う「訪問歯科診療」を利用できることがあります。訪問歯科では、口の状態の確認、口腔ケアの指導、歯石除去、入れ歯の調整などを受けられることがあります。介護中は通院の負担が大きくなることもあるため、こうした診療を利用すると口の健康管理を続けやすくなります。
 通院が困難な場合は、かかりつけ歯科医院のほか、地域の歯科医師会、担当ケアマネジャー、訪問診療に対応する医療機関に相談すると探しやすくなります。

第5章 介護口腔ケアのQ&A

介護中の口腔ケアについては、実際にケアを始めてみるとさまざまな疑問が出てくることがあります。ここでは、家族介護者からよく聞かれる質問をまとめました。

Q.歯みがきを嫌がる場合はどうすればよいですか

A.介護を受けている方が歯みがきを嫌がることは珍しくありません。体調がすぐれないときや、眠い時間帯などは特に拒否が強くなることがあります。無理に続けると口腔ケア自体を嫌がるようになることもあるため、体調の良い時間帯に短時間で行うことが大切です。歯ブラシを口に入れることが難しい場合は、ガーゼなどで歯や歯ぐきを軽く拭く方法から始めることもあります。

Q.入れ歯は夜も入れたままでよいのでしょうか

A.一般的には、就寝前に入れ歯を外して清掃することがすすめられています。入れ歯を外すことで歯ぐきの粘膜を休ませることができ、口の中の清潔も保ちやすくなります。外した入れ歯はブラシなどで洗い、清潔な状態で保管します。入れ歯の痛みや違和感がある場合は、歯科医院で確認すると安心です。

Q.口臭が強くなってきた場合はどうすればよいですか

A.口臭が強くなる原因としては、口の乾燥、歯周病、入れ歯の汚れなどが考えられます。口腔ケアを続けていても改善しない場合は、口の中に炎症や感染が起きている可能性もあります。歯科医院で口の状態を確認することで原因が分かることもあります。口臭は本人が気づきにくいことも多いため、家族が変化に気づくことも大切です。

Q.歯みがきは1日に何回行えばよいですか

A.基本的には食後や就寝前など、1日2回程度を目安に行うことが多いです。ただし、体調や生活リズムによっては難しいこともあります。その場合は、短時間でも口の中を清潔に保つことを意識します。食後に口をすすぐだけでも、口の中の汚れを減らすことにつながります。

Q.通院が難しい場合は歯科診療を受けられますか

A.通院が難しい場合でも、訪問歯科診療に対応している歯科医院があります。歯科医師や歯科衛生士が自宅や施設を訪問し、口の状態の確認や口腔ケアの指導、入れ歯の調整などを行うことがあります。地域によって対応している歯科医院が異なるため、かかりつけの歯科医院や地域の歯科医師会に相談すると情報を得られることがあります。

介護中の口腔ケアは、日々のケアの積み重ねが大切です。家族だけで対応が難しいと感じたときは、歯科医療のサポートを取り入れることで、無理のないケアを続けやすくなります。

まとめ

介護中の口腔ケアは、歯をきれいにするだけでなく、食事や健康を支える大切なケアです。口の中を清潔に保つことで、誤嚥性肺炎の予防や食事機能の維持につながると考えられています。

家庭でのケアは、歯みがきや入れ歯の清掃など基本的な方法から始めることができます。ただし、口腔ケアを嫌がる、食事がしにくくなる、入れ歯が合わないなどの変化が見られる場合は、家族だけで抱え込まず歯科医院に相談することも大切です。

口の状態は日々変化します。定期的に確認しながら、必要に応じて歯科医療のサポートを取り入れていくと安心です。

記事作成日 2026年3月21日

 

参考文献

厚生労働省 口腔機能向上マニュアル
 https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1f.pdf

日本歯科衛生士会 介護保険施設における口腔ケア推進マニュアル
 https://www.jdha.or.jp/pdf/outline/suishinmanual.pdf

担当した診療所

ファミリー歯科

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千葉県東金市で30年以上にわたり、地域の皆さまに寄り添った歯科医療を提供してきたクリニックです。

お口のトラブルの原因を丁寧に見極め、ご希望に沿った治療計画をご提案。
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