ブログ

むせやすいのは舌の衰え?舌トレーニングとオーラルフレイル対策を解説

2026.01.19

ファミリー⻭科

むせやすいのは舌の衰え?舌トレーニングとオーラルフレイル対策を解説

食事のときに「飲み込みにくい」「むせやすい」、会話で「滑舌が落ちた気がする」と感じたことはありませんか。こうした小さな違和感は、年齢や疲れのせいと思って見過ごされがちですが、実は「舌の働き」が関係していることがあります。舌は、食べ物を口の中でまとめて送り込む、発音を助ける、唾液を行き渡らせるなど、日常の動作を支える重要な器官です。
近年、歯科医療では、舌の力(舌圧)や舌・口唇の動きの低下が「口腔機能低下症」やオーラルフレイルと関連することが知られ、早い段階での気づきと対策が注目されています。舌トレーニングは、こうした口の機能を保つセルフケアの一つです。しかし自己流で続けると負担になるケースもあるため、正しいやり方で続けることが大切です。

本記事では「舌トレーニング」について歯科の視点から必要性を整理し、無理なく続けるポイント、受診の目安を解説します。

 

監修した先生

奈良 倫之先生

奈良 倫之 先生

医療法人社団 歯友会 理事長
ファミリー歯科 院長

第1章 舌トレーニングとは?―歯科が重視する「舌の機能」

舌トレーニングというと、「舌を鍛えると滑舌が良くなる」「小顔になる」といった話題が有名です。美容目的でチャレンジしたことがある方もいるでしょう。
しかし歯科の視点では、舌は「生きるための機能」に直結する重要な器官として捉えています。
舌は筋肉でできており、噛む・飲み込む・話すといった動きを支えるだけでなく、口の中で食べ物をまとめる、唾液を広げて口腔内を守るなど、多くの役割を担っています。
そのため歯科では舌トレーニングを「口の機能を保つためのトレーニング」と考えます。特に近年は、舌の力(舌圧)や舌・口唇の動きの低下が「口腔機能低下症」と関連することが知られ、早期の対策が推奨されています。

舌トレーニングは「筋力」だけでなく「動かし方」も重要

歯科では、舌で上あごを押す力(舌圧)のほか、舌や唇を素早く動かす能力(舌口唇運動機能)などを評価します。たとえば、舌がうまく動かないと食べ物を口の奥へ送れず、噛み終わっているのに飲み込みにくい、食べこぼしが増えるといった症状につながることがあります。舌トレーニングでは舌を強く押すだけでなく、「前後・左右に動かす」「一定のリズムで発音する」など、多彩な動かし方で行います。

舌の働きが落ちると起こりやすいサイン

舌機能の低下は、初期ほど自分では気づきにくい傾向があります。次のような変化が続く場合は、舌の動きや飲み込みの力が弱っている可能性があります。

  • 食事中にむせる、飲み込むのに時間がかかる
  • 口の中に食べ物が残りやすい
  • 以前より滑舌が悪いと感じる
  • 食べこぼしが増えた

これらは必ずしも病気を示すものではありませんが、放置すると食事量が減ったり、食べやすいものに偏ったりして、体力低下につながることもあります。違和感の段階で舌機能の低下を自覚し、生活の中でできる対策を始めましょう。

相談したほうがよいケースは?

舌トレーニングは多くの人にとって安全性の高いセルフケアですが、自己流で強い負荷をかけると、舌やあごの疲れ、痛みにつながることがあります。また、むせが強い方や飲み込みの不安がある方は、嚥下(えんげ)機能の低下が背景にある場合もあるため、先に歯科や医療機関で確認すると安心です。歯科では舌圧など口腔機能を客観的に評価できる場合もあり、「今の状態に合ったトレーニング」を組み立てやすくなります。無理なく続けるためにも、症状が続くときは早めに歯科医院に相談しましょう。

第2章 なぜ重要?舌機能の低下が招くトラブル

舌の衰えは見た目では分かりにくく、自分では気づかないまま進むことがあります。しかし食べる・飲み込む・話すといった日常動作に関わるため、少しの低下でも生活の不便さとして現れやすい器官です。
近年、歯科では口の機能の衰えを「口腔機能低下症」や「オーラルフレイル」として捉え、早めの気づきと対策が重視されています。舌トレーニングは、その入口となる舌の力や動きを保つセルフケアのひとつです。ただし闇雲に舌を動かせば良いわけではありません。舌機能が低下すると何が起こりやすいかを理解したうえで、無理のない範囲で舌トレーニングを続けましょう。

舌が弱ると「飲み込み」が不安定になりやすい

舌は食べ物をまとめ、のどへ送り込む役割を担っています。舌の動きが弱くなると、食べ物が口の中に残りやすくなったり、飲み込むタイミングがずれたりして、むせにつながることがあります。特に「食事中に咳き込む」「お茶や水でむせる」といった変化が増えた場合、舌だけでなく飲み込み全体の協調運動が乱れている可能性があります。

噛む力より先に「食べ方」が変わってくる

舌の機能が落ちてくると、硬いものが噛めなくなる前に「食べ方」が変わりやすくなります。たとえば、自然とやわらかい食事を選ぶ、早食いできず食事時間が長くなる、口の中が疲れて途中で食べるのをやめてしまう、といった変化です。こうした変化は本人が気づきにくい一方で、食事量の低下や栄養の偏りにつながることがあります。「歯の痛みやぐらつきはないのに、食事がしにくい」という場合、舌や口腔機能が関わっているケースも考えられます。

口の衰えは全身の衰えにつながることがある

口腔機能低下症やオーラルフレイルでは、口の機能低下がフレイルや低栄養と関連する可能性が示唆されています。口から十分に食べられない状態が続くと、筋肉量が落ち、活動量が減り、体力が落ちやすくなります。舌トレーニングは、その入口となる口の機能を守るためのセルフケアです。大きな症状が出てから慌てるより、むせ・滑舌・食べこぼしなどの小さな変化の段階でケアを始めるほうが続けやすく、結果的に無理がありません。気になる症状がある方は、口腔機能のチェックも含めて歯科で相談しましょう。

第3章 歯科ではどう見る?舌圧と口腔機能低下症の関係

舌の衰えは、自分の感覚だけでは判断しにくいものです。「むせる」「滑舌が悪い」といった症状があっても、体調や疲れ、食べ方の癖で一時的に起こることもあります。一方で、気づかないうちに舌の力(舌圧)や舌の動きが落ちているケースもあり、早期の段階では“本人の実感”と“実際の機能低下”が一致しにくいことがあります。
そこで歯科では、口の機能を「口腔機能低下症」という枠組みで捉え、検査や評価を行うことがあります。舌トレーニングを自己流で続ける前に、歯科で「今の状態」を確認できると、やるべきことが整理しやすくなります。

口腔機能低下症では「舌」も検査項目に含まれる

口腔機能低下症は、噛む・飲み込む・話すといった口の働きが低下している状態です。歯科では複数の検査項目を組み合わせて判断し、その中に「低舌圧(舌の力の低下)」が含まれます。舌の力は、食べ物をまとめて奥へ送る力にも関係するため、舌トレーニングと特に相性の良い領域といえます。つまり「舌を鍛える」ことは、単独の体操ではなく、口腔機能を守るケアの一部として位置づけられます。

歯科で評価される「舌の機能」とは

舌の機能は「力」だけでなく「動かし方」も重要です。歯科では舌圧測定のほか、舌や唇を素早く動かす能力(舌口唇運動機能)をみることがあります。これらは滑舌や食べこぼしなど、日常の困りごととつながりやすい点です。
舌トレーニングを始める際は、筋力強化だけを目標にするより、「飲み込み」「発音」「食べ方」といった目的に合わせた形で設計するほうが安全で続けやすくなります。

セルフチェックと歯科受診の目安

以下の表は舌トレーニングに役立つ、簡単な目安です。

気になる変化 原因の可能性 どうすればよいか
水やお茶でむせる 嚥下の協調運動の乱れ 無理な自己流は避け、歯科・医療機関に相談
滑舌が落ちた 舌口唇機能の低下 軽い口腔体操+改善しなければ歯科で確認
食べこぼしが増えた 舌のコントロール低下 食べ方を見直しつつ舌トレーニングを検討
口に食べ物が残る 舌圧低下・唾液分泌の低下 口腔ケア+必要に応じて歯科で舌圧評価を検査

症状が軽い場合はセルフケアで十分なこともありますが、「むせが増えている」「飲み込みが怖い」と感じる場合は、早めに相談しておくと安心です。

歯科に相談したい赤信号のサイン

むせが急に強くなる、食事中に息苦しさが出る場合は、早めに歯科または医療機関に相談しましょう。以下の症状が続く場合も同様です。

  • 食事中のむせで体重が減ってきた
  • 声がガラガラする
  • 発熱を繰り返す(誤嚥性肺炎など、感染症のリスクもあるため)

第4章 自宅でできる舌トレーニングメニュー

舌トレーニングは舌だけを鍛えるのではなく、唇・ほほ・唾液腺・飲み込みの動きまで含めて整えると続けやすく、日常の変化にもつながりやすくなります。日本歯科医師会が紹介する「オーラルフレイル対策のための口腔体操」は、まさにこの考え方に沿った内容です。

出典:日本歯科医学会 オーラルフレイル対策のための口腔運動
 https://www.jda.or.jp/oral_frail/gymnastics/

口腔体操は、頑張って強く行う必要はありません。ポイントは、ゆっくり大きく舌や口を動かし、終わったあとに疲れが残らない強さに調整することです。

① お口・舌の動きをスムーズにする体操(基本セット)

  • (唇を中心とした)口の体操
    口を「ウー」とすぼめる → 「イー」と横に開く
  • 唇とほほの体操
    ほほを膨らませる → すぼめる(数回繰り返す)
  • 舌の体操(舌圧訓練)
  • 舌を左のほほ内側に強く押しつける
  • 外側から指でほほを押さえ、舌はそれに抵抗する

これをゆっくり10回行い、右側も同様に10回行います。

  • パタカラ体操
    • 「パ」唇をはじくように
    • 「タ」舌先を上の前歯の裏へ
    • 「カ」舌の奥を上あご奥へ
    • 「ラ」舌を丸めるように

これを各発音8回×2セット行います。

  • 唾液腺マッサージ(3か所)
    • 耳下腺:耳の前あたりを円を描くように10回
    • 顎下腺:顎の内側のくぼみ3〜4か所を順に押す(各5回目安)
    • 舌下腺:顎の中心あたりの柔らかい部分を上方向にゆっくり10回

このセットは舌が動きやすい状態をつくる準備運動になります。滑舌や飲み込みが気になる方は、まずはこの基本から入る方が安心です。

② 飲み込むパワー(嚥下機能)をつける体操

準備運動が終わったら、スムーズに飲み込める筋力を付ける口腔体操を行いましょう。

  • 開口訓練
    • ゆっくり大きく口を開け10秒キープ
    • 口を閉じて10秒休む(痛みが出ない範囲で)
  • ベロ出しごっくん体操
    • 舌を少し出したまま口を閉じ、つばを飲み込む
  • おでこ体操
    • 手のひらでおでこを押し合う
    • おへそをのぞきこみながら5つ数える

※首に痛みがある方、高血圧の方は避けてください。

  • ごっくん体操
    • 喉ぼとけに手を当て、飲み込んで上下を確認
    • 喉ぼとけを上げる → 上げたまま5秒保つ → 息をしっかり吐く

「むせ」がある場合、舌だけ鍛えるよりも「飲み込み全体」を整えるほうが安全です。特に、むせが増えてきた方は、自己流で負荷を上げずにこのパートを丁寧に行いましょう。

続け方(習慣化のコツ)

  • 朝の歯磨き後、入浴後など、やりやすいタイミングで組み込む
  • 1日1回でもよいので「やめない」を優先する
  • 痛み・めまい・強い疲れが出る日は中止する

できれば同じ時間帯、同じ作業中に続けることで習慣化しやすくなります。やりすぎて疲れが出ない程度に行いましょう。

第5章 舌トレーニングは本当に効果がある?

舌トレーニングは手軽なセルフケアですが、「本当に効果があるの?」と疑問に感じる方も多いでしょう。結論から言えば、舌の力(舌圧)や舌の動きは、トレーニングによって改善が期待できるという報告があります。一方で、筋トレと同じく、短期間で劇的に変化するものではなく、効果の出方には個人差があります。

歯科の領域では、舌の力を舌圧として測定し、低下が見られる場合には舌圧を高める訓練を提案することがあります。研究でも、舌を上あごに押しつけるような舌圧訓練によって、舌圧が向上する可能性が示されています。こうした結果は、舌トレーニングが単なる体操ではなく、口腔機能を支える手段の一つとして検討されていることを意味します。

参照:Namiki C, et al. Tongue-pressure resistance training improves tongue and suprahyoid muscle functions simultaneously. Clin Interv Aging. 2019. doi:10.2147/CIA.S194808.
 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30962680/

注意したいのは、「舌圧が上がればすべて解決する」とは限らない点です。むせやすさ、飲み込みにくさ、滑舌の低下は舌だけでなく、唇やほほの動き、咀嚼の状態、唾液量、のど(嚥下)の協調運動など、複数の要素が関係します。たとえば舌を鍛えても、入れ歯が合っていない、噛みにくい食品ばかり選んでいる、口呼吸で口腔内が乾燥していると、体感として改善しにくいこともあります。舌トレは「口全体の機能を整える取り組みの一部」として捉えましょう。

実践するときは、強度よりも「継続」と「過負荷を避けること」がポイントです。舌や顎は疲労が蓄積しやすく、頑張りすぎると痛みやつり、顎のだるさにつながることがあります。特に“むせ”が増えている方は、舌圧訓練だけに集中するより、日本歯科医師会が紹介している口腔体操のように、舌・唇・嚥下をまとめて整える形のほうが安全です。

舌トレの目的は大きく分けて3つあります。

  • 舌の力(舌圧)を保つ
  • 舌の動き(可動域・器用さ)を保つ
  • 飲み込み・発音など生活機能を守る

「何を良くしたいのか」が曖昧なままだと、頑張っているのに効果を感じにくくなります。むせ、滑舌、食べこぼしなど、困りごとに合わせて続け方を調整していきましょう。改善が乏しい場合や不安が強い場合は、歯科で口腔機能を確認しながら進めると安心です。

まとめ

舌トレーニングは、滑舌や飲み込みなど日常の小さな困りごとと結びつきやすいセルフケアです。舌は食べ物をまとめてのどへ送る、発音を助ける、唾液を広げて口の中を守るなど、口の働きの中心を担っています。そのため舌の力や動きが落ちると、むせ・食べこぼし・話しにくさといった変化が起こりやすくなります。
ただし、舌トレは「強く鍛えれば良い」ものではありません。舌圧訓練だけに偏らず、日本歯科医師会が紹介する口腔体操のように、唇・ほほ・嚥下の動きも含めて整えると続けやすくなります。むせや飲み込みづらさが続く場合は、自己流で負荷を上げず、歯科で口腔機能(舌圧など)を確認しながら進めると安心です。できる範囲から、今日から少しずつ始めていきましょう。

 

作成日 2026年1月16日

参考文献

日本歯科医学会 オーラルフレイル対策のための口腔運動
 https://www.jda.or.jp/oral_frail/gymnastics/

 日本歯科医学会 口腔機能低下症に関する基本的な考え方
 https://www.jads.jp/assets/pdf/basic/r06/document-240329.pdf

担当した診療所

ファミリー歯科

ファミリー歯科

〒283-0068 千葉県東金市東岩崎2-25-14

電話番号:0475-55-8111

千葉県東金市で30年以上にわたり、地域の皆さまに寄り添った歯科医療を提供してきたクリニックです。

お口のトラブルの原因を丁寧に見極め、ご希望に沿った治療計画をご提案。
担当制による継続的なサポート体制を整え、安心して通える環境づくりに取り組んでいます。

また、歯友会のミッションである「地域に安心と革新をもたらし、健康を未来へつなぐ」という想いのもと、わかりやすい説明と高精度な治療技術の導入にも力を入れています。

トップに戻る