歯周病の治療はインプラントだけではない―残せる歯を守る選択肢とは
2026.01.29
ファミリー⻭科
歯ぐきが腫れる、歯磨きで血が出る、口のにおいが気になる―こうした違和感があると、「歯周病かもしれない」と不安になる方は多いでしょう。さらに「このまま歯が抜けたらインプラントしかないのでは?」と考え、検索で「歯周病 インプラント」という言葉にたどり着くケースも少なくありません。
ただし、歯周病の治療はインプラント一択ではありません。歯周病は歯ぐきだけでなく、歯を支える骨が少しずつ弱っていく病気で、進行度によって治療や対応が大きく変わります。早期ならセルフケアと歯科での基本治療で改善が期待でき、歯を残せる可能性もあります。たとえ抜歯が必要になっても、ブリッジや入れ歯など複数の選択肢があり、「自分にとって現実的な治療」を選ぶことが大切です。
そこで本記事では、歯周病とインプラントの関係を整理しながら、インプラント以外の治療法や選び方のポイントをわかりやすく解説します。
目次
監修した先生
奈良 倫之 先生
医療法人社団 歯友会 理事長
ファミリー歯科 院長
第1章 歯周病とインプラントの関係は?
歯周病というと「歯ぐきが腫れる」「歯磨きで血が出る」といった症状が目立つため、歯ぐきだけのトラブルと思われがちです。しかし実際は、歯ぐきの炎症が続くことで、歯を支える骨(歯槽骨)が少しずつ溶けていく病気です。進行すると歯がぐらつき、噛みにくさや歯並びの変化につながることもあります。
怖いのは、初期には痛みが少なく、気づいたときには進行しているケースがある点です。「腫れが引いたから治った」「血が出なくなったから大丈夫」と自己判断してしまうと炎症が深い部分に残り、静かに悪化していくこともあります。まずは歯周病の本質が「歯を支える土台の病気」であることを押さえましょう。
歯のぐらつき(動揺)、膿が出る、噛むと痛い、歯ぐきが下がったなどの症状があれば早めに歯科で相談するとよいでしょう。
歯周病がある状態でインプラントを入れると、周囲炎のリスクが上がる
インプラントは失った歯を補う有力な治療法ですが、「入れれば安心」というものではありません。歯周病の原因となる細菌や炎症が口の中に残った状態でインプラントを入れると、インプラントの周りに炎症が起きる「インプラント周囲炎」のリスクが高まるとされています。
インプラント周囲炎が進むと、インプラントを支える骨が減っていき、グラつきや脱落につながる可能性があります。歯周病がある人ほど「インプラントにするかどうか」以前に、歯周病を安定させることが重要です。治療計画の順番を間違えると、せっかく治療しても長持ちしにくくなります。
出典:日本歯周病学会 歯周病患者における口腔インプラント治療指針およびエビデンス 2018
https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_implant_2018.pdf
インプラントの前に必要なのは、歯周病の評価とコントロール
「歯周病=インプラントができない」と決めつける必要はありませんが、同じくらい「歯周病でもインプラントなら解決」と短絡的に考えるのも危険です。重要なのは、歯周病の進行度を正確に評価し、炎症をコントロールした上で治療を検討することです。
歯科では歯周ポケットの深さ、出血の有無、歯のぐらつき(動揺)、レントゲンでの骨の状態、全身の状態などを総合的に見て判断します。状態によっては、歯を残す治療が優先されることもあれば、抜歯後にブリッジや入れ歯を含めて比較するほうが現実的なケースもあります。
インプラントは「最後の手段」ではなく、選択肢の一つです。ただしインプラントが成功する条件は、歯周病治療とメインテナンスを含めた長期管理にあります。まずは歯周病を整え、そこから自分に合った治療を選んでいきましょう。
第2章 歯周病治療の概要
歯周病治療は、いきなり処置から始まるわけではありません。まず、現在の状態を正確に把握するための検査を行います。歯周ポケットの深さ、出血の有無、歯のぐらつき(動揺)、レントゲンでの骨の吸収状態などを確認し、「どの歯がどの程度進行しているか」を整理します。
ここを丁寧に行う理由は、歯周病が部分的に進行しているケースも多いからです。見た目は似た症状でも、軽度の炎症なのか、すでに骨が大きく減っているのかで治療方針は変わります。また、歯周病の原因には磨き残し、歯並び、噛み合わせ、喫煙、糖尿病などの要因が重なっていることもあります。治療を長持ちさせるには、原因を特定し、優先順位をつけて改善していく姿勢が欠かせません。
基本治療は「歯垢・歯石を減らす」ことから
歯周病治療の基本は、歯の表面や歯周ポケット内にあるプラーク(歯垢)と歯石を減らし、炎症を落ち着かせることです。歯科医院ではスケーリング(歯石除去)やSRP(歯根面の清掃)などを行い、細菌が増えにくい環境を作ります。
ただし、歯科の処置だけで歯周病が改善するわけではありません。歯周病は「毎日の磨き残し」が積み重なって悪化する病気のため、セルフケアの精度が結果に直結します。歯ブラシだけでは届きにくい部分も多く、歯間ブラシやフロスの使い分けが必要になることもあります。歯周病治療は歯を削る治療とは違い、「口腔ケアの習慣を変える治療」の側面が強いのが特徴です。
中等度以上では外科・再生療法、そして「継続管理」が鍵になる
歯周病が中等度以上まで進行している場合、基本治療(歯石除去や清掃指導)だけでは炎症が十分に落ち着かず、歯周外科治療や再生療法が検討されることがあります。こうした治療は、歯周ポケットの深い部分に残りやすい感染源を減らし、歯ぐきの腫れや出血を抑えて、悪化しにくい環境を整えることが目的です。ただし処置を行えば終わりではなく、治療後の状態を維持するには継続管理が欠かせません。
近年は、細菌対策を補助する方法としてブルーラジカルが話題になることもあります。ブルーラジカルは、消毒薬と特殊な波長の光で歯周病菌を殺菌する補助治療です。これだけで歯周病が治るわけではありませんが、清掃や基本治療を土台にしたうえで、補助的に組み合わせる考え方もあります。適応や限界は口の状態によって変わるため、歯周病がなかなか改善しない場合や再発を繰り返す場合は、選択肢の一つとして歯科で相談すると安心です。治療後も定期的なメインテナンスを続けていきましょう。
参考:医療法人社団 歯友会 ブルーラジカル紹介ページ
第3章 歯を失ったらインプラントしかない?入れ歯やブリッジなど多くの選択肢があります
歯周病が進行すると、歯を支える骨が減り、歯を残すのが難しくなることがあります。その結果、抜歯が必要になるケースもありますが、その時点で「インプラントしかない」と決めつける必要はありません。インプラントは噛み心地や見た目の面で優れた治療ですが、外科処置が必要で費用負担も大きく、歯周病がある方は術後管理(メインテナンス)が重要になります。
つまり、歯を失った後の治療はインプラントができるかどうかではなく、自分の口の状態と生活に合うかという視点で選ぶことが大切です。
ブリッジ・入れ歯にも、それぞれ役割がある
失った歯を補う方法には、インプラントのほかにブリッジや入れ歯があります。ブリッジは固定式で違和感が少なく、比較的短期間で機能回復しやすいのが特徴です。ただし支えとなる歯に大きな負担がかかるため、支台歯が歯周病で弱っている場合は慎重な判断が必要です。
入れ歯(部分入れ歯・総入れ歯)は取り外し式で、清掃しやすいという利点があります。歯周病がある方にとっては、口の中を清潔に保てる設計がかえって合う場合もあります。また、金属のバネが目立ちにくいタイプとしてノンメタルクラスプデンチャーが選択肢になることもあります。
選び方のポイントは「残っている歯を守れるか」
補う治療を選ぶ際は、「失った歯をどうするか」だけでなく、残っている歯をどう守るかが重要です。歯周病は放置すると周囲の歯にも影響しやすく、治療選択によっては負担が偏り、別の歯を弱らせてしまうこともあります。
そのため、歯科では歯周病の進行度だけでなく、噛み合わせ、残存歯の本数、清掃のしやすさ、通院可能性まで含めて総合的に判断します。「どれが一番良い治療か」ではなく、「この状態で長く安定しやすい治療はどれか」を歯科医師と一緒に検討しましょう。
歯周病の人が検討する「歯を補う治療」比較
| 治療法 | 主な特徴 | 歯周病の人が注意したい点 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| インプラント | 自分の歯に近い噛み心地。周囲の歯を削らない | 歯周病が残るとインプラント周囲炎のリスク。術後管理が必須。 禁煙・糖尿病コントロールが重要、骨造成で行えないことも |
歯周病が安定しており、清掃・定期受診を継続できる |
| ブリッジ | 固定式で違和感が少ない。比較的短期間で治療可能 | 支えの歯に負担がかかるため、支台歯の歯周病が問題になる。 支台歯の削合、清掃性の低下 |
支台歯が健康で、固定式を希望する |
| 入れ歯(部分・総) | 取り外し式。清掃しやすい。調整しながら使える | 合わないと痛みや噛みにくさが出ることも。定期調整が必要 咬合力が落ちるリスク、慣れるまで時間がかかる |
体への負担を抑えたい/清掃性を重視したい |
| ノンメタルクラスプデンチャー | バネが目立ちにくい樹脂製の入れ歯 | 残存歯の位置や噛み合わせにより、適応が限られることも | 見た目も気になるが、入れ歯で補いたい |
第4章 入れ歯・ブリッジで治療する選択もあります
歯周病が進行して歯を失った場合、「せっかくならインプラントにしたい」と考える方は少なくありません。ただし歯周病の治療では、見た目や噛み心地だけで治療を決めるのではなく、炎症を落ち着かせ、残っている歯を守れる設計になっているかが大切です。
歯周病は再発しやすい病気です。治療後もメインテナンスを続けながら安定状態を保つ必要があります。そのため「外科処置を伴う治療が負担」「長期管理に自信がない」「まずは口の中の状態を整えたい」といった場合には、インプラント以外の方法を選ぶことも選択肢です。治療法の優劣ではなく、長く安定して使える選択かどうかが判断の軸になります。
ブリッジは固定式で安定しますが、支えの歯が重要
ブリッジは、失った歯の両隣の歯を支えにして人工歯を固定する方法で、装着後の違和感が少なく、噛み心地も比較的自然です。取り外しの必要がないため、生活の中での使いやすさを重視する方には魅力があります。
一方で歯周病の観点からは、支えとなる歯(支台歯)に負担がかかる点に注意が必要です。支台歯が歯周病で弱っている場合、ブリッジによって負担が増えると歯のぐらつき(動揺)が悪化したり、支えの歯の寿命が短くなることがあります。ブリッジは「できるかどうか」ではなく、「支えの歯を守りながら維持できるか」を見極めて選ぶ治療法です。
入れ歯は管理しやすさが強み
入れ歯は「噛みにくい」「外れそう」「見た目が気になる」といったイメージが先行しやすいかもしれません。しかし歯周病の人にとっては、入れ歯がむしろ合理的な選択になるケースもあります。取り外して清掃できるため、炎症管理の面ではメリットがあり、残っている歯や歯ぐきの状態に合わせて調整しながら使える点も長所です。
入れ歯といえば金属が目立って恥ずかしいと感じるかもしれません。その場合は金属のバネが目立ちにくい入れ歯、ノンメタルクラスプデンチャーが検討されることもあります。
ただし、入れ歯は設計と調整が重要で、痛み・噛みづらさがある場合は我慢せず都度調整することが必要です。歯周病治療は継続が欠かせないため、無理なく管理できる治療法を選ぶことが口腔内全体の安定につながります。
まとめ
歯周病があると、「歯が抜けたらインプラントしかないのでは」と不安になる方も多いでしょう。しかし歯周病の治療で最も大切なのは、まず炎症を落ち着かせ、残っている歯や歯ぐきを安定させることです。インプラントは有力な選択肢の一つですが、歯周病が不安定な状態では長持ちしにくく、術後の管理も欠かせません。お口の状況によってはブリッジや入れ歯を選び、口の中を清潔に保ちながら機能回復を目指す方が現実的なケースもあります。治療法に正解は一つではなく、生活習慣や通院のしやすさも含めて「続けられる治療」を選ぶことが大切です。まずは歯周病の検査を受け、治療の優先順位を整理したうえで、納得できる選択をしていきましょう。
作成日 2026年1月17日
参考文献
日本歯周病学会 歯周病患者における口腔インプラント治療指針およびエビデンス 2018
https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_implant_2018.pdf
厚生労働省 歯周病とは
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-001
担当した診療所
ファミリー歯科
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