インプラント費用はどこまで控除できる?医療費控除の申請方法と必要書類
2026.02.28
インプラント
インプラント治療は、失った歯を補う方法として広く行われています。しかし自由診療のため費用は高額になりやすく、1本あたり数十万円かかることもあります。複数本の治療になると、まとまった支出になるケースも珍しくありません。そのため、「医療費控除の対象になるのか」「どうやって申請するのか」「どんな書類が必要なのか」と疑問を持つ方は多いでしょう。
治療目的のインプラントは医療費控除の対象になるとされています。(審美目的は適用外)ただし、自己負担額や保険金の扱い、確定申告の手続きなど、いくつか確認すべきポイントがあります。制度を正しく理解していないと、本来受けられる控除を見逃すこともあります。
この記事では、インプラント治療と医療費控除の関係、申請方法、必要書類を整理します。制度の仕組みを確認していきましょう。
- インプラントは医療費控除の対象になる?
- いくら戻る?
- ふるさと納税と併用するとどうなる?
などの疑問を解説します。
※本記事は令和7年分(2025年分)の国税庁の公開情報をもとに作成しています。個別の税務判断は税理士または税務署にご相談ください。
目次
監修した先生
奈良 倫之 先生
医療法人社団 歯友会 理事長
ファミリー歯科 院長
第1章 インプラントは医療費控除の対象になるか
インプラント治療を受けた場合、その費用が医療費控除の対象になるのかは多くの方が気になる点です。治療を目的とするインプラントは医療費控除の対象になるとされています。ただし、すべてのケースで自動的に認められるわけではありません。
医療費控除の対象となる治療
医療費控除は、「治療を目的として支払った医療費」が対象です。病気やけがの治療、機能回復を目的とする歯科治療も含まれます。インプラントは、失った歯を補い、噛む機能を回復するための治療です。そのため、原則として医療費控除の対象になります。
参照:国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
歯科治療についても、治療目的であれば対象になることが明記されています。
対象外になる可能性があるケース
一方で、これらは控除対象外になります。
- 見た目の改善のみを目的とした美容治療
- 医療と関係のないオプション費用
- 保険金などで補填された部分
- デンタルローンの利息部分
医療費控除の対象になるのは、自己負担した治療費のみです。補填された金額は差し引いて計算します。
参照:国税庁 No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm
家族のインプラント費用も合算できる
医療費控除は治療を受けた本人だけでなく、生計を一にする家族の医療費も合算できます。たとえば、配偶者や子どもの医療費やインプラント費用をまとめて申告することができます。
インプラントは高額になりやすい治療です。家族分を合算すると、医療費控除の対象額が高くなることがあります。
自由診療でも対象になる理由
インプラントは保険適用外の自由診療です。しかし、医療費控除は保険診療に限られた制度ではありません。治療として必要であれば、自費診療であっても対象になります。
大切なのは、治療目的であることと、自己負担していることです。この2点がクリアできれば原則、控除の対象になります。
第2章 医療費控除の仕組みと計算方法
治療目的のインプラントの費用は、原則として医療費控除の対象になります。しかし実際にいくら戻るのかは所得に応じて大きく変わります。医療費控除は「支払った金額がそのまま返ってくる制度」ではありません。所得から一定額を差し引く制度です。
まずは基本の計算方法を確認します。
医療費控除の基本的な計算式
医療費控除の金額は、次の式で計算します。
(その年に支払った医療費 − 保険金などで補填された金額)− 10万円
※総所得金額が200万円未満の場合は「総所得の5%」
参照:国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
例えば、年間の医療費が80万円で、保険金などで10万円補填された場合は、
(80万円 − 10万円)− 10万円 = 60万円
この60万円が所得から差し引かれます。実際に軽減される税額は、その人の所得税率によって変わります。
インプラント費用を含めるときの注意点
インプラント治療では、手術費、上部構造費、検査費などが分かれて請求されることがあります。これらは治療目的であれば合算して計上できます。ただし、以下の対象外の項目は差し引いて申請しましょう。
- 生命保険などで補填された金額は差し引く
- デンタルローンの利息部分は対象外
- 美容目的のみの処置は対象外になる場合がある
対象になるのは、あくまで「自己負担した治療費」です。この整理を誤ると、計算がずれてしまいます。
参照:国税庁 No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm
どれくらい税金が軽減されるのか
医療費控除は所得控除です。所得が高いほど控除額も大きくなります。
控除額に税率を掛けた分が、実際の減税額になります。たとえば課税所得が330万円~694万9000円の方(所得税率20%)の場合、控除額60万円なら、
60万円 × 20% = 12万円
が控除額の目安になります。さらに住民税も軽減されるため、実際の負担軽減はもう少し大きくなります。
インプラント治療は高額になりやすいため、医療費控除の影響も比較的大きくなります。ただし、控除額や還付額は人によって異なります。治療前に概算を確認しておくと、資金計画を立てやすくなります。
第3章 医療費控除の申請方法
医療費控除は、年末調整ではなく確定申告で手続きを行います。会社員の方でも、インプラント費用を控除する場合は税務署で申告が必要です。(オンライン上で申請できるe-Taxでも可)
ここでは、申請の流れを順に整理します。
- ① 医療費を1年分まとめて集計する
対象となるのは、1月1日から12月31日までに実際に支払った医療費です。インプラントの手術費、検査費、上部構造費などを合算します。生命保険などで補填された金額があれば差し引きます。家族分も、生計を一にしていれば合算できます。
年をまたいで治療が続いた場合は、翌年の治療費は翌年の確定申告で申請しましょう。 - ② 医療費控除の明細書を作成する
令和7年現在、医療機関の領収書はそのまま提出するのではなく、「医療費控除の明細書」を作成して提出します。医療機関ごとに、支払額や補填額を記載します。領収書は提出不要ですが、5年間の保存が必要です。税務署から問い合わせがあれば、保管している領収書を提出します。
参照:国税庁 医療費控除の明細書
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/06/6_01.htm - ③ 確定申告書を作成する
医療費控除の金額を確定申告書の所定欄に記入します。インターネット申請では、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の案内に従って入力できます。計算も自動で行われるため、誤りを防ぎやすくなります。 - ④ 提出方法を選ぶ
提出方法は、e-Tax(オンライン提出)または税務署への書面提出です。e-Taxを利用すると、還付までの期間が比較的短い傾向があります。e-Taxはマイナンバーカード方式またはID・パスワード方式で利用できます。 - ⑤ 還付金を確認する
申告が受理されると、指定口座に還付金が振り込まれます。還付額は、医療費控除額と所得税率によって決まります。
申告期限は、還付申告のみなら5年間です。領収書と所得が分かる書類(源泉徴収票など)があれば、数年分まとめて申請できます。高額医療費控除の他にも確定申告があれば、翌年の確定申告期間(原則は2月16日~3月15日、年によっては土日で変動)にまとめて申請しましょう。
第4章 申請に必要な書類一覧
インプラント治療で医療費控除を受けるには、確定申告の際にいくつかの書類を準備する必要があります。現在は提出が不要になった書類もありますが、保存義務があるものもあります。ここでは、必要書類を整理します。
- ① 確定申告書
医療費控除を反映させるための基本書類です。会社員でも医療費控除を受ける場合は提出が必要です。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の案内に沿って作成できます。 - ② 医療費控除の明細書
医療機関ごとの支払額や保険金などで補填された金額を記載する書類です。インプラント手術費、検査費、上部構造費などを合算して記入します。
参照:国税庁 医療費控除の明細書
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/06/6_01.htm - ③ 医療機関の領収書(提出不要・保存必要)
現在は原則提出不要ですが、5年間の保存義務があります。税務署から提示を求められる場合があります。日付や治療内容が分かるよう整理して保管しましょう。 - ④ 医療費通知(健康保険組合からの通知)
健康保険組合などから届く医療費のお知らせです。これを利用すると、一部の医療費は明細書への転記が簡略化できます。ただし、インプラントは自由診療のため記載されないことが一般的です。 - ⑤ デンタルローン契約書(利用した場合)
ローン会社が立て替え払いをした場合でも、信販会社が立替払した年(契約成立年)は医療費控除の対象になります。契約書や支払明細を保存しておくと確認しやすくなります。ただし金利・手数料は控除の対象外です。 - ⑥ 源泉徴収票(会社員、パート勤務の方のみ)
控除を申請する人の源泉徴収票は、所得額を入力するのに必要です。もし手元になければ会社に連絡して再発行を依頼しましょう。退職後でも再発行は依頼できます。 - ⑦ 本人確認書類
マイナンバーカード、または通知カードと本人確認書類の組み合わせが必要です。e-Taxを利用する場合も、マイナンバーの入力が求められます。
医療費控除は、書類の不備があると手続きが遅れることがあります。提出する前に何度も確認して、正しい内容で申請しましょう。不安なら税務署で質問しながら書類を作成すると安心です。相談で確定申告会場(税務署)に行く場合は、国税庁の『確定申告特集』で予約方法(LINE等)を確認しましょう。
インプラントは高額な治療です。領収書を厳重に保管し、年末にまとめて整理すると申告がスムーズです。
第5章 ふるさと納税と併用すると上限額が変わることも。よくある質問と注意点
インプラントの医療費控除を受けると「思ったより額が少ない」と驚くかもしれません。医療費控除は支払った金額がそのまま戻る制度ではないため、思ったより額が少ないと感じることがあります。
さらに、医療費控除により課税所得が下がることで、ふるさと納税の控除上限額が変わることがあります。ここでは、よくある注意点を整理します。
デンタルローンを利用した場合
インプラント費用をデンタルローンで支払った場合でも、医療費控除の対象になります。ローン会社が医療機関へ立て替え払いをした時点で、その年の医療費として扱われます。ただし、対象になるのは治療費の元金部分のみです。分割払いに含まれる利息や手数料は医療費控除の対象外です。契約書や支払明細は保存しておきます。
交通費や関連費用
通院のために公共交通機関を利用した場合、その交通費は医療費控除の対象になります。バス代や電車代も控除額に含めることができます。ただし、自家用車のガソリン代や駐車場代は原則として対象外です。タクシー代は、やむを得ない事情がある場合に限られます。
交通費は日付・区間・金額をメモしておくと整理しやすくなります。
ふるさと納税と併用
すっかり定着したふるさと納税ですが、併用する際は上限額に注意しましょう。医療費控除を受ける年は、ふるさと納税の上限額が変わる可能性があります。
医療費控除とふるさと納税はどちらも所得控除です。医療費控除を受けると課税所得が下がります。課税所得が下がることで、住民税やふるさと納税の上限額にも影響します。上限額を超えて寄附すると、自己負担が増えるかもしれません。
医療費が高額だった年は医療費控除後の金額で、ふるさと納税シミュレーターで再計算をすることをおすすめします。
なお、医療費控除を申請すると、ふるさと納税のワンストップ特例は無効になります。確定申告の期間に、ふるさと納税の確定申告も併せて行いましょう。
参照:総務省 ふるさと納税のしくみ 税金の控除について
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html
制度は毎年確認する
税制は改正されることがあります。必ず国税庁の最新情報を確認してから手続きを進めましょう。不明点があれば税務署に相談する方法もあります。
インプラントは高額な治療です。税制は複雑な制度ですが正しく理解し、漏れのないように申告書を作成しましょう。
まとめ
インプラント治療は、治療を目的とするものであれば医療費控除の対象になります。ただし、全額がそのまま戻る制度ではなく、所得から一定額を差し引く仕組みであることは把握しておきましょう。
申請は確定申告で行います。医療費控除の明細書を作成し、確定申告書に反映させます。領収書は提出不要ですが、5年間の保存義務があります。デンタルローンの利息部分など、対象外の項目もあります。
ふるさと納税と併用する場合は、医療費控除によって寄附の上限額が下がることがあります。事前に全体の税額を確認しておくと慌てずに済みます。
インプラントは高額な治療です。制度を正しく理解し、必要書類を整えて申告を行いましょう。不明点があれば国税庁の公式情報を確認する、税務署に相談すると安心です。
作成日 2026年2月25日
参考文献
国税庁 令和7年分確定申告特集 医療費控除を受ける方へ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/iryou-koujo.htm
国税庁 No.1119 医療費控除に関する手続について
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1119.htm
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