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親知らずの抜歯は必要?判断基準と抜かない場合の注意点

2026.02.28

ファミリー⻭科

親知らずの抜歯は必要?判断基準と抜かない場合の注意点

「親知らずは抜いたほうがいいですか?」と相談を受けることは少なくありません。痛みがある場合は分かりやすいですが、症状がないときほど抜くか、温存するか判断に迷うところです。
若いうちに抜いたほうがいいと勧められることもあれば、問題がなければそのままでよいと言われることもあります。情報が多い分、何を基準に決めればよいのか分かりにくいかもしれません。

親知らずは、必ず抜かなければならない歯ではありません。しかし、生え方や周囲の状態によっては、炎症やむし歯の原因になることがあります。抜くか抜かないかよりも「今の状態にリスクがあるかどうか」を確認しましょう。

この記事では、親知らずを抜くべきかどうかの判断基準と、抜かずに経過をみた場合に起こり得る影響を整理します。

参照:日本口腔外科学会 親知らずについて
https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/ha/oyashirazu/

 

監修した先生

奈良 倫之先生

奈良 倫之 先生

医療法人社団 歯友会 理事長
ファミリー歯科 院長

第1章 親知らずの基礎知識

親知らずは、正式には「第三大臼歯」と呼ばれる歯です。前歯から数えて8番目にあたり、永久歯の中で最後に生えてきます。多くは10代後半から20代前半にかけて生えてきますが、中には生えない人もいます。顎が小さくなっている現代人では、親知らずがきれいに並ぶためのスペースが不足しやすいといわれています。

参照:日本口腔外科学会 親知らずについて
 https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/ha/oyashirazu/

問題が起きやすい親知らずは?

親知らずにはいくつかの生え方があります。まっすぐ生えて上下で噛み合っている場合は、必ずしも抜歯が必要になるわけではありません。歯ブラシが届き、清掃が十分にできていれば、ほかの奥歯と同じように管理できます。

一方で、斜めや横向きに生えている場合、あるいは一部だけ歯ぐきから出ている場合は注意が必要です。歯と歯ぐきの境目に汚れがたまりやすく、炎症を起こしやすいためです。これが繰り返されると、腫れや痛みを伴うことがあります。

外から見えない「埋伏歯(まいふくし)」

親知らずが骨や歯ぐきの中に埋まったままの状態を「埋伏歯(まいふくし)」といいます。完全に骨の中に埋もれていると、自覚症状がないことも少なくありません。ただし、埋伏歯の位置や角度によっては、手前の歯を圧迫したり、清掃しにくい環境をつくることがあります。

埋伏歯がすべて問題になるわけではありません。レントゲンで埋伏歯の位置を確認し、将来的な影響を評価することが大切です。

なぜ親知らずはトラブルが起きやすいのか

親知らずは一番奥にあるため、歯ブラシが届きにくい部位です。不衛生になりやすく、むし歯や歯周炎が起こりやすい傾向があります。特に半分だけ出ている親知らずでは、歯ぐきのすき間に細菌が入り込みやすく、智歯(ちし)周囲炎を発症することがあります。
下あごの半埋伏の親知らずでは、若年成人では一定の頻度で智歯周囲炎が発症すると報告されています。特に20代前半は発症のピークとされることが多く、繰り返す場合は抜歯が検討されます。

また、隣の第二大臼歯との間に汚れがたまりやすく、気づかないうちに手前の歯がむし歯になることもあります。親知らずは周囲の歯にも悪影響が及ぶ可能性があります。

親知らずの状態は人それぞれ異なります。歯科医院では親知らずがどのように生えているのかを知り、抜歯か温存かを診断します。

第2章 抜歯の判断基準

親知らずを抜くか温存するかは複合的な要素があり、緊急時以外ではすぐに判断できないこともあります。

現在の症状と将来のリスクをあわせて、抜歯か温存かを検討します。ここでは、日本口腔外科学会や神奈川県歯科医師会の内容を参考に、判断の目安を整理します。

参照:日本口腔外科学会 親知らずについて
https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/ha/oyashirazu/

参照:神奈川県歯科医師会 親知らずは必ず抜かなきゃダメ? 抜歯したほうがよい場合とその理由
https://www.dent-kng.or.jp/colum/basic/29827/

抜歯が検討される主なケース

  • 繰り返し腫れや痛みが起きている
  • 智歯周囲炎を何度も発症している
  • 親知らずまたは手前の歯がむし歯になっている
  • 親知らずが原因で歯周病が進行している
  • レントゲンで嚢胞などの病変が疑われる
  • 矯正治療やかみ合わせの観点から影響がある

炎症を繰り返すと自然に改善することは少なく、再発しやすい傾向があります。手前の歯に悪影響が出ている場合は、早めの対応が勧められることがあります。

経過観察になることが多いケース

  • まっすぐ生えて上下で噛み合っている
  • 痛みや腫れなどの症状がない
  • 清掃が十分にできている
  • 完全に骨の中に埋まっており問題が確認されない
  • 全身状態や年齢から抜歯リスクが高い

無症状で安定している場合は、定期的なレントゲンと口腔内チェックで経過をみる選択もあります。すべての親知らずを予防的に抜くことはなく、温存したほうが良いこともあります。

判断するときに確認するポイント

  • 親知らずの生え方と角度
  • 親知らずと、神経や血管の位置
  • 将来トラブルを起こす可能性
  • 抜歯によるリスクと回復期間
  • 年齢と治癒力

特に下の親知らずは、神経との距離が大きなポイントになります。位置によっては慎重な判断が必要になります。

親知らずの判断は一律ではありません。現在の状態と将来の見通しを説明してもらい、納得したうえで選択することが大切です。迷ったときは、歯科医院でレントゲン画像を見ながら説明を受けると理解しやすくなります。

実際の診療では、「今は症状がないが、手前の歯に影響が出始めている」ケースも少なくありません。症状の有無だけでなく、画像所見を含めて総合的に判断します。

第3章 親知らずを抜かないとどうなるか

親知らずに症状がないと、「このまま様子を見ても大丈夫だろう」と考える方は少なくありません。実際に、問題を起こさずに経過する親知らずもあります。しかし、生え方や位置によっては、時間の経過とともにトラブルが起きることがあります。ここでは、抜かずに放置した場合に考えられる主な影響を解説します。

智歯周囲炎を繰り返すことがある

半分だけ歯ぐきから出ている親知らずでは、歯と歯ぐきの境目に汚れがたまりやすくなります。その結果、歯ぐきが腫れたり、痛みが出たりする「智歯周囲炎」を起こすことがあります。

智歯周囲炎では、以下の症状が起こります。これらの症状がある場合は、早めに歯科医院の受診を検討しましょう。

  • 2~3日以上歯ぐきの腫れが続く
  • 頬まで腫れる
  • 押すと痛む
  • 口臭
  • 飲み込みにくい、のどに違和感がある
  • 口が開きにくくなる(開口障害)

炎症が強い場合は38度前後の発熱や頬の腫れを伴うこともあります。体調を崩したタイミングや睡眠不足をきっかけに急に悪化するケースも少なくありません。

抗菌薬で一時的に改善しても、原因の親知らずが残っていると再発するリスクがあります。

手前の歯がむし歯や歯周病になることがある

横向きや斜めに生えている親知らずは、手前の第二大臼歯の間に汚れがたまりやすくなります。この部分は歯ブラシが届きにくく、気づかないうちにむし歯が進行することがあります。

親知らずだけでなく、健康だったはずの手前の歯まで失う原因になりかねません。特に、横向きに埋まっている場合は、歯の接触部に深いむし歯ができやすいとされています。

嚢胞などの病変ができることがある

まれなケースですが、埋まったままの親知らずの周囲に袋状の病変(嚢胞)ができることがあります。自覚症状がほとんどないまま進行し、レントゲン検査で偶然見つかることもあります。嚢胞が形成される頻度は高くありませんが、完全に骨の中に埋まっている場合でもゼロではありません。そのため、無症状でも数年ごとのレントゲン確認が勧められることがあります。

嚢胞が大きくなると、周囲の骨を吸収したり、隣の歯に影響を与えることがあります。

年齢とともに抜歯の難易度が上がることがある

若い時期は骨がやわらかく、治癒も比較的早い傾向があります。年齢が上がると骨が硬くなり、抜歯後の回復に時間がかかることがあります。また、全身疾患や服薬状況によっては、処置に配慮が必要になる場合もあります。

すぐに抜く必要がない場合でも、将来抜歯が必要になる可能性があるかどうか、事前に確認しておくと安心です。

親知らずを抜かない選択が必ず間違いというわけではありません。しかし、放置した場合に起こる可能性があるリスクを把握して判断することが大切です。症状がない時期でも歯科医院で定期検診を行い、親知らずの現状を確認していきましょう。

第4章 親知らずを抜くメリットと注意点

親知らずを抜くかどうかは、リスクとメリットを比較して考えます。痛みがある場合は決断しやすいですが、無症状の場合は迷いやすいものです。この章では、抜歯の利点と注意点を整理します。

炎症の原因を取り除ける

智歯周囲炎を繰り返している場合、親知らずを抜くことで再発の可能性を下げることができます。抗菌薬で一時的に改善しても、歯の位置が変わるわけではありません。根本的な対処として抜歯が選択されることがあります。

手前の歯にむし歯や歯周病の影響が出ている場合も、原因を取り除くことで周囲の環境を改善できます。将来的に第二大臼歯を守るという意味でも、抜歯が勧められることがあります。

歯磨きしやすくなる

親知らずは一番奥にあるため、歯ブラシが届きにくい部位です。特に斜めや横向きに生えている場合は、日常的な清掃が難しくなります。抜歯後は磨き残しが減り、歯磨きが楽になることがあります。

むし歯や歯周病の予防という観点からも、口腔内を清潔に保ちやすい点はメリットです。ただし、親知らずがまっすぐ生えて問題なく清掃できている場合は、このまま温存しても問題ないこともあります。

抜歯にはリスクもある

親知らずの抜歯は外科処置です。処置後に腫れや痛みが出ることがあります。通常は数日から1週間ほどで落ち着きますが、落ち着くまでの期間は個人差があります。

下の親知らずでは、神経が近い位置にあることがあります。その場合、しびれなどの症状が一時的に出る可能性があります。下あごの親知らずは下歯槽神経に近接していることがあります。報告では、抜歯後のしびれは軽度なものを含めて0.35~8.4%とされています。多くは一時的で、数週間から数か月で改善すると報告されています。ただし、ごくまれに症状が長く残ることがあるため、術前の画像診断で慎重に評価します。

出典:PubMed Inferior alveolar nerve injury after mandibular third molar extraction: a literature review
 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25635208/

また、持病がある方や抗血栓薬を服用している方は抜歯のリスクが高く、慎重な配慮が求められます。

年齢とタイミングも考慮する

若い世代の方は骨がやわらかく、比較的治癒が早い傾向があります。一方で、年齢が上がると骨が硬くなり、抜歯の難易度が上がることがあります。

ただし、若ければ必ず抜いたほうがよいとは限りません。将来トラブルになる可能性が高いかどうかが抜歯の判断材料です。

親知らずの抜歯には、メリットと注意点の両方があります。説明を受けて疑問があれば、遠慮せずに歯科医師に確認しましょう。

第5章 歯科医院で確認しておきたいこと

親知らずをどうするか迷ったときは、「抜く」「抜かない」という結論だけでなく、それぞれのメリット、デメリットを整理して考えることが大切です。ここでは抜く場合と抜かない場合の違いを解説します。

抜く場合と抜かない場合の比較

項目 抜く場合 抜かない場合
炎症の再発 原因を取り除ける 再発する可能性がある
清掃のしやすさ 奥まで磨きやすくなる 磨き残しが出やすい
手前の歯への影響 むし歯・歯周病の予防につながることがある 隣の歯に負担がかかる場合がある
処置の負担 腫れや痛みが一時的に出る 外科処置は不要
将来的な対応 将来の抜歯リスクを減らせる 年齢とともに抜歯が難しくなることがある
管理方法 抜歯後は通常の定期管理 定期的なレントゲン確認が必要

抜歯した場合

炎症を繰り返している場合や、手前の歯に影響が出ている場合は、原因を取り除くという意味で抜歯が合理的な選択になります。将来的なトラブルを減らすという観点ではメリットがあります。ただし、外科処置である以上、腫れや痛みなどの負担は避けられません。

温存した場合

まっすぐ生えていて清掃できている場合や、完全に骨の中に埋まっていて問題がない場合は、経過観察になることがあります。ただし放置せず、定期的に歯科医院に通院して確認することが前提です。

親知らずの抜歯の判断は、現在の症状と将来のリスクを分けて考えることです。現在症状がなくても、将来炎症を起こす可能性が高い状態であれば、早めに対応する選択もあります。一方で、リスクが低い場合は慎重に経過をみることもあります。

親知らずの判断では、正解は一つではありません。自分の状態を理解し、メリットと負担を比較したうえで選びましょう。

まとめ

親知らずは、必ず抜かなければならない歯ではありません。しかし、生え方や位置によっては、炎症やむし歯の原因になることがあります。大切なのは、「抜くかどうか」ではなく、「どの程度のリスクがあるか」を確認することです。

繰り返し腫れや痛みがある場合や、手前の歯に悪影響が出ている場合は、抜歯が検討されます。一方で、まっすぐ生えていて清掃できている場合や、完全に骨の中に埋まって問題がない場合は、経過観察になることもあります。

判断には、レントゲンによる位置確認や神経との距離の評価が欠かせません。また、年齢や全身状態も考慮されます。メリットとリスクの両方を理解し、納得したうえで選択しましょう。

迷ったときは歯科医院で説明してもらい、疑問点を一つずつ確認していきましょう。冷静に判断することで、将来のトラブルを防ぐことができます。

 

作成日 2026年2月25日

参考文献

日本口腔外科学会 口腔外科相談室 「親知らず」について
 https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/ha/oyashirazu/

神奈川県歯科医師会 親知らずは必ず抜かなきゃダメ? 抜歯したほうがよい場合とその理由
 https://www.dent-kng.or.jp/colum/basic/29827/

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